冷凍室は息苦しく

ブラックモアは『どちらかが相手の舌を噛み切らないと出られない部屋』に入ってしまいました。
20分以内に実行してください
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目が覚めると壁も床も真っ白な小部屋に閉じ込められていた。窓もドアもなく、一切の脱出経路が見当たらない。唯一あるのは「どちらかが相手の舌を噛み切らないと出られません。20分以内に実行してください」と書かれた紙一枚だけである。何故かスタンドが出せない。新手のスタンド攻撃だろうか?
「ブラックモア?」
同じく閉じ込められたにも関わらず、部屋を注意深く調べまわっている冷静な男に話しかける。座り込んだまま動けていない私とは大違いだ。
「完全に閉じ込められているようですね。出口はおろか、壁も壊せませんし…」
「まさかこのまま出られないなんてことは、」
「やはり巫山戯たこの指令通り、舌を噛み千切るほか無いか…」
「えっ」
「試してみる価値はありそうですね」
ぼそぼそとした呟きだったがはっきり聞こえた。まって、今なんて言ったこの人。背筋に嫌な汗が伝う。思わず尻で後ずさりした。案の定、ブラックモアはゆっくりと私に歩み寄ってきた。
「不本意ですがここはルールに従ってみましょう。ナマエ、口を開けてくれますか?」
「い、嫌に決まってるでしょ。なんで私が」
「大丈夫です、一瞬で済みますから」
壁際に追い詰められた私は逃げ場を無くす。ふっと見上げた影に恐怖で嗚咽が漏れそうになる。身体が強ばった一瞬の隙を逃さず、壁に首と頭を押さえつけられた。躊躇の無い力強さにぎゃぁという悲鳴が漏れる。嫌だ嫌だ嫌だ。必死の抵抗として彼の肩を押しやり、引っ掻き回すが微動だにしない。
「貴女にとっては災難でしたね。ですが私も仕事を放ってこんな所で油を売っているわけにはいかないんです」
すいませェん、と謝るブラックモアはいつもと変わらない申し訳なさそうな顔なのに、目だけがぽっかりと穴が空いてるみたいに真っ黒で、何を考えているのか分からなくて、恐ろしくて堪らない。やめてと声をあげる前に口を塞がれた。首をぎゅうぎゅう締め上げられると自然と苦しくて口が開く。それを待っていたとばかりにブラックモアは一層深く口付けると私の舌に噛み付いた。痛い痛い痛い。くぐもった悲鳴をあげてバタバタと暴れてもがく私を押さえつけ、彼の歯は口内で舌に益々噛み付いていく。痛い痛い痛い苦しい苦しい助けて助けて助けて。噎せるような鉄の味が口いっぱいに広がった時、視界が白く点滅し、ぐるんと白眼を剥いた。ぶちんっと音が聞こえた瞬間、痛みと苦しみと声の無い慟哭の中、私は意識を手放した。


いつの間にか白い部屋に開け放たれた扉が在った。ぷっと噛み千切った女の舌を吐き出して、ブラックモアは唾液と血に塗れた口元を煩わしそうに拭う。惨事の後にも関わらず彼の顔は相変わらず下がり眉とヘの字口のままで、それが逆に彼の冷徹さと無慈悲な人間性を物語った。
床に倒れて事切れたナマエに一瞬だけ視線をやった後、扉の方へ歩いていった。
「また報告書が増えますね」
ブラックモアの意識は既に、自分のデスクに積まれた報告書の山のことを考えていた。
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