大天使の庭

*女体化×女主
*過去捏造
母親は女の私が土をいじることを大変嫌っていた。普段は温厚な人だったが、女の子らしくない遊びはとにかく毛嫌いしていた。
「淑女らしくしなければ素敵な殿方に見初められませんよ」というのが母親の口癖だった。私を理想の貴族の子女に仕立てあげて、良家に嫁がせたい一心だったのだろうと思う。
私が泥だらけになって遊んだり花壇に手を突っ込むのを見て、母親は真っ青な顔をして大騒ぎをする。そして決まって真冬でも凍えるように冷たい水風呂に入れる。「服も手もこんなに汚してどういうつもり?」「もう二度と泥遊びはしないでって誓って!」気が違ったみたいにそう叫んでから、毎回私をピアノの前に引きずって座らせる。「泥遊びじゃあなくて化石探しなんだよ母さん」という訂正も許されずに鍵盤の上に手を無理やり置かれ、弾かせられるのは苦痛だった。
母なりの娘への親心というには、それはあまりに息苦しいものだった。

たまに今でも母親の夢をみる。夢をみた時、先に起きていたナマエに聞くと眠っている自分はひどく魘されているらしい。「魘される?私が?餓鬼じゃあるまいし…君の勘違いだろう」と根拠の無い強がりを言ったらナマエは悲しいのか笑っているのか分からない顔をする。
「恐ろしかったです」
そう言って手を強く握られて困惑する。冷たい私の手とは反対に、彼女の手は温かい。ナマエは私と違って水風呂に入れられたことなど無いのだろうなと考えると、羨ましいような縋りたいような気持ちになった。
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