18回目の夏をお知らせ

*女体化×男主
彼女の元カレリストはきっと形があるならば大昔の法律だとか制約を書いた巻物の紙みたいに長いんだと思う。ただし厳しい紙に反して、書かれてる内容は薄っぺらだ。「マイケルは金持ちだけどキスが下手くそ!」とか「クレイグはロマンチックで一途だけど腋臭が耐えられない」とか、延々と別れた彼氏の名前と申し訳程度の説明が並べられてるだけ。
恋愛は彼女にとってただのゲーム。元カレリストをどれだけ長くしていくかのタイムアタック。
「絶対ぶっ殺してやる!あの野郎!」
ビールをジョッキで飲み干し、バーのカウンターにガラスの底をドンと打ち付けて怒り狂う彼女はお世辞にも可愛い女とは言えない。女の嫉妬は怖い。まるで棘でいっぱいの薔薇の庭だ。
「浮気なんてしやがって、ダイナマイトで木っ端微塵にしなきゃ気が済まない!」
「他の女に逃げた男なんて忘れちまえよマジェント」
「こんなにムカついてんのに忘れられると思う!?」
「寝て起きて明日の朝にはニコニコして忘れてるくせに」
僕が指摘すれば、彼女は何か言い返そうとするが図星だったためいきなり大人しくなる。だってよ、だって、とばつが悪そうに口ごもる彼女。その様子に僕の中の意地の悪い部分が顔を出す。
「“元カレリスト”を埋めるのは順調みたいだね」
すると一瞬きょとんという顔する彼女。しかしすぐに何か思いついたのか、頬に挑戦的な笑みが浮かんだ。それが目に入ると僕の胸にもじりじりと熱が燻る。
ジョッキを置いて、僕の方へ身を傾け、耳に口を寄せる。その手馴れた一連の動作。
「アンタの名前を書くスペースならいつでも空いてる」
くらりと眩暈がする。あぁこの阿婆擦れめ。

BGM…Blank Space/Taylor Swift
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