ただ一心に

*刺客とお着替えシリーズ
*夢主が大統領の娘

「貴方って街で湧いてるシューシャンボーイみたい。ああそうだわ靴を磨いて頂戴」
年端もいかぬ小娘にそう命令されるのは屈辱的だった。ナマエが大統領の娘でなかったらその上等そうなヒラヒラの服を剥いで地面に這い蹲らせ、逆に辱めてやりたい……そう思いながらも靴墨を付けては、念入りに小娘の革靴を磨いている自分はつくづく小胆な男だと思う。
チョコレートの色をした革靴は30回か40回ほど磨いた頃に表面が輝き、私の顔を円く歪んで映した。最後の仕上げに靴の上を軽くブラシで払ってやれば、新品同様の見た目に変わる。他人の靴を磨くなんて従軍していた頃以来だが、腕が鈍っていない自分に内心少し感心していた。
「できました」
「じゃあ履かせて頂戴」
巫山戯るなよ小娘。思わず舌打ちしたくなったがグッと堪え、靴を持ってナマエの前に跪く。そして見上げた時、私はハッとした。
真っ白な女の素足がこぼれているのに気付いたからだ。程よく肉が付き、曲線を描いて地に下りているそれはつるりと光っているようにも見えた。美しい、と不覚にも思ってしまった。
「どうしたの、軍人さん」
見入っていると、上からナマエの声が降ってくる。それには嘲るような、色を匂わすような調子が含まれていて、こいつは私をからかっているのだと分かった。悔しい。だが、目の前の女の脚はそれを忘れさせるほどに妖艶であった。脹脛のあたりにかるく触れる。柔らかく指に吸い付くようで思わず生唾を飲み込んだ。ピンク色の爪が並んだ爪先を掬うように革靴を履かせ、ぴたりとそれがはまると胸が高鳴った。
すると靴を履いた脚はゆるりと私の肩に巻き付くようにしなだれかかってきた。顔を上げればナマエがにやにやと誘うように笑っていた。本当に悪ふざけが過ぎる。興奮してはならないと思ったが、柔らかい脹脛が私の頬を撫でてきたものだから堪らずその純白に接吻をしていた。脚を貪り始めた私を見下げながら、ナマエは面白がるように目を細めた。
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