テーブルの椅子に座って、こくりと温かいホットミルクを飲みながら目の前につっ伏す白の頭を見ていた。太くて逞しい腕を枕にしてすやすやと眠るリンゴォさんは私よりずっと年上の人なのにひどく幼げに見えた。
ふと部屋の壁にかかった時計を見やる。針はちょうど14時を指している。リンゴォさんが「昼寝」と称して眠ってから3時間経った。

ネコもびっくりなほどリンゴォさんはよく眠る。私はちょくちょく彼の家に遊びに行くのだが、決まって彼は眠りについている。1日の大半を寝て過ごしているんじゃあないかと思うほど、彼はよく眠る。昼間になると夕方まで眠り続け、夜は7時くらいに眠りにつく。朝の時間は早起きしてかろうじて目を覚ましているが、私と会話や家の仕事をしていても瞼をしぱしぱさせたりどこかぼんやりとしていたりして眠そうだ。最近では椅子にちょっと座っただけでも居眠りをできるようになったらしい。
「眠っているとあまり腹も空かないんだ」と前にリンゴォさんが言っていたが、食事も一日2食か1食になった。本当に眠気がひどい日は何も食べない時があり珍しくないと聞いた時、さすがに私も心配で怒ってしまった。
説教している時も相変わらず眠気には勝てないようでこっくりこっくり船を漕いでいた。

そのへんの鼾や歯軋りをするおじさんと違ってリンゴォさんは眠っている時も上品だ。すぅすぅという静かな寝息、上下する胸と背中、微かに揺れる白くて繊細な睫毛。ずっと見ていると時が過ぎるのを忘れてしまう。
睡眠過多なリンゴォさんは心配だが、リンゴォさんの寝顔を見るのは好きだ。風景を写真に収めて外界から切り取ったみたいな満足感がある。私だけのものになったみたいな錯覚を覚え、胸の膨れるような心地良さを感じる。

「もうずっと目覚めなかったら良いのに」

零れそうになった願望をミルクを飲み干すことで押し込める。だめだめ、そんなことを考えては。傾いていく自分の心。胸を締め付ける悲しみにも似た幸福が不思議と心地よかった。
リンゴォさんの愛おしい寝顔を堪能しながら、私は今日も葛藤する。



過眠症
20151005

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