きっと、私のせいじゃない

暗殺チームの幽霊達には色々な特性があるようだ。

まず「スタンド」という一般人には無い特殊能力が一人1つずつあること。これは生前から使えるらしく、主にこの能力を使って暗殺のお仕事をしていたのだとか。しかし幽霊になった現在、生前よりは能力のレベルが下がっているらしい。
例えばイルーゾォさんの鏡に出入りする「スタンド」は本来なら自分やそれ以外のものを鏡の中に引きずり込むことが出来たそうだが、今は自分以外のものを拒むことは可能なだけで引きずり込むことはできなくなったらしい。幽霊になった今、暗殺をすることは無いが「俺の持ち味が…」と嘆いていたから不便を感じているんだろう。
……でも今でも一般人の私からしてみれば充分な能力だというのに、生前の「全盛期」の彼らはどれほどの能力者だったのだろうか。そう考えると少し恐ろしい。


特性二つめ。死者の彼らは物を動かしたり触ったりすることができるが、生きているものには触れられないのだそうだ。私のような人間はもちろん、動物や植物なんかも。
ホルマジオさんが「猫と遊べないのがつらい」と言っていたし、メローネさんが偶にうっかり私に飛びついてきた時は体をすり抜けたのが証拠だ。前者は気の毒だが後者にはとても安心した。


特性三つめ。彼らは神出鬼没だ。いないと思えばいつの間にか背後に立っていたり、姿が現れたと思ったら消えてしまう。家の中にいるのは確かだが偶に一日中顔を会わせない時もある。
これに関しては心臓に悪いからいきなり現れるのは勘弁してほしいなぁと思う。


そして特性四つめ。これが個人的に一番驚いたのだが幽霊は食事ができるようだ。
たまたま私が夜食にコンビニ弁当を食べているとリゾットさんがおかずの唐揚げをさらっていった。
その食事の仕方も独特で、唐揚げに触れたかと思えばそこから半透明の霊体の唐揚げをつまみ、口にするというものだった。もちろん実物のおかずには何の変化も無い。
私はその光景に唖然としながら「美味しいですか?」と聞いたら「ジャッポーネの市販弁当は美味いな。しかしこんな夜中に肉とは……肥るぞ」と辛辣なことを言われた。だって美味しいんですもの唐揚げ弁当。
ただ、死んでいる霊体の彼らには栄養は必要ないので食事はいわば嗜好品のようなものらしい。

「だからって毎回私の夜ご飯つままないでくださいよ…」
「良いじゃあないか、減らないんだから」
「ジャッポーネの米ってこんなに美味いんすね!」
「おいペッシ!そんなにがっつくんじゃねぇ!」

リゾットさんが何やら吹き込んだのか、毎夜私のコンビニで買ってきたご飯を幽霊の皆さんがさらっていくようになった。
いや、実物のご飯には影響は全く無いけどゆっくり落ち着いて食べられない。

「リゾットの言ってた通りだ。夜中に米の塊二つに鳥肉と菓子パン食べてる食生活じゃ完璧に太るよ杏」
「メローネさん、私のツナマヨおにぎり食べながら言われても…」

今度からはイタリア人が好まなさそうなおにぎりの具を買ってこようかな…。梅干しとか佃煮とか。幽霊がご飯を啄む様子を遠い目で見ながらそう思った。



20150509

prev next

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -