饐えたにおいの紅水母 | ナノ
星なんてミカンの最後の一房のようなものでしょ
痘痕が来て数日もしないうちにデイダラとの任務の日は訪れた。任務の内容は暗殺。暗殺といっても国の長を殺すとか大きなターゲットではなくて、とある盗賊団の首領がターゲットであった。最近この盗賊団が暁のことを探って情報を忍里に売ろうとしているらしい。
暁としては邪魔者な雑草でしかなく、早く刈り取っておかなければならない相手であった。
「つまり私達は草むしりに行かされるってことね」
任務内容を聞いて牢から出された痘痕はそう言って肩をすくめていた。





起爆粘土で拵えた鳥に乗り、遥か上空から二人は盗賊団のアジトを目指した。最初こそデイダラの忍術を前に物珍しそうな顔をした痘痕だったが、空を飛び始めてからは興味が失せたのか気怠げに欠伸をしている。

「おいババァ、任務だってのにやる気ゼロかよ…うん」
「だってかれこれ一時間は飛んでるじゃない、丁髷坊や。…まだ目的地には着かないの?」
「もうすぐだ!だからもうちょっとシャキッとしろ!」

お互いに相手の呼び方にツッコミをするのは諦めたようだった。


「だいたいお前クナイの一本も持ってきてねぇじゃねぇか。しかも相変わらず動き辛そうな服だな…うん」

デイダラの言う通りだった。本来忍というのはクナイや手裏剣といった忍具を必ず幾つか所持しているものである。しかし痘痕はそれらの武器を所持しているようには見えない。加えて分厚い外套に長手袋、裾の長いロングスカートと動きにくそうな服装に身を包んでいる。暁で着用を義務付けられているマントもそれほど活動的な衣服とはいえないが、痘痕の服装は更に窮屈なものであった。

「ただでさえ餓鬼の姿で不便なんだから格好ぐらい…」
「武器は使わないし、あまり動くのも得意じゃないの」

デイダラの言葉を遮ってぴしゃりと痘痕は言い放った。柳眉を逆立てて何故だか不愉快そうに顔を顰めている。デイダラはその表情に少々怯んで口を閉じた。
すぐに痘痕はそっぽを向いて取り澄ましたように背筋を伸ばしたが、明らかにデイダラの言葉が癪に障った様子だった。
前に聞いた使用する禁術の話と何か関係があるのだろうか…?
デイダラはそう考えながら黙って鳥の進行方向へ向き直った。こいつにはまだ謎がある。そう確信しながら目的地へと向かう速度を速めた。



20150404
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