饐えたにおいの紅水母 | ナノ
宇宙魚のパレード
「今日から暁に一人、構成員が加わることになった」

まだ正式に認めたわけではないがな。
暁のリーダーであるペインはある日いきなりメンバー達にに招集をかけ、そう言った。彼らが驚いたのは無理もない。
彼の傍らにいた「新しい構成員」はあまりに小さな姿だった。

黒の外套を纏う小柄で華奢な体躯、きつくおさげに結われた髪の毛、手袋をはめた小さな掌。齢はまだ十歳くらいだろうか。
暁のような犯罪者集団の集まりには到底いる筈もない唯の幼女だった。

しかしながら強面揃いの人間に囲まれているというのに彼女は泣き顔一つすら見せない。
それどころか全く無表情のまま、背筋をぴんと伸ばして立っている。
感が良いメンバーの人間はこの時点で幼女が只者ではないことを薄々悟っていた。
暁の構成員のデイダラもその一人だった。ペインから離れたところで話を聞いていたが、幼女の様子に直ぐに違和感を覚えた。

「そいつ、ただの餓鬼じゃねぇみたいだな?うん?」

起爆粘土を手で捏ねながらペインにデイダラは問う。「察しが良いな」とペインは頷く。と、同時に幼女はつっと顔を上げてデイダラを見た。いや、正確には睨めつけたといったほうが正しい。

「私を餓鬼扱いしないで頂戴、丁髷の坊や」
「なっ…!?」

幼女の口から出た子供とは思えない嫌味な物言いにデイダラは思わず粘土を取り落としそうになった。
小さな幼女は構わずに暁のメンバーをぐるりと見渡した。

「そこの無礼な坊や含めて此処にいる全員に改めて挨拶しておくわ。私は霧隠れの忍、痘痕。二十年も昔に里抜けしたけれどね」

「二十年も昔」という言葉からこの痘痕という娘が見た目通りのただの幼女でないことが察せられた。
暁には他人の心臓を奪いながら何十年という年を生きながらえている角都、全身を傀儡に改造して少年の姿から年を取らないサソリ、今は脱退しているが不老不死の術の研究を追求している大蛇丸といった面々がいる。
痘痕もそういった人間の摂理に反した術か何かの使い手なのだろうと安易に想像はついた。

「まだ正式にはこのリーダーさんに認められていないけど、今日から暁の一員として任務を共にすることになったから」
「お前の能力は噂に聞いた通りのものだが…本当に信頼に値するのか見極めさせてもらう」
「あら、忍に信頼なんてなかなか面白いことを言うのね貴方」

痘痕は無垢な容姿には似つかわしくない皮肉った台詞を吐き、ニヒルな笑いを浮かべてペインを見上げる。
大きな瞳はまるで化石のように老成し、鈍く光った。

「なんなんだアイツ、ムカつく奴だな…うん」

デイダラはそんな偉そうな態度の怪しげな幼女に舌打ちをした。彼はまさかこれから自分が深く関わっていくことになろうとは思いもしなかった。



20150326
prev next


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -