「ところでさ、どの辺に住んでんの?」
『えーと・・・』

彼が学校のことやテニスのことを話し出してからどれくらい経っただろうか。
急に彼が訊ねてきた。
自販機の明かりだけで当たりが照らされているため、遠くのほうは真っ暗だが必死にここから見えるであろう自分の家を見つけて指を指す。

『あれだよ。あの高台の家』
「あれかよい!近いんだな。あっ!俺のこと見てたって、あそこから?」
『そうだよ』
「そっかー。なんか恥ずかしいな。変なこと出来ねぇよい」

そう言って笑う彼から目を反らした。
大好きな人が隣にいるということに慣れない。

ピーピー

自分の腕時計が午前24時半を知らせた。
いつの間にかこんな時間になっていた。
彼は明日も朝練などがあるに違いない。

『私そろそろ帰らなくちゃ』
「あ、お、おう。じゃあな!」
『うん。バイバイ』

彼に手を振って家へと歩き出す。
こんな風に話せる日はもうこないだろうな・・・──。
また今日みたいに偶然会える日が来るまで会えない。
またいつものように窓から見てるだけ・・・。

「なぁ!」

そんなことを考えていたら、突然後ろから彼が呼び止めた。

「今度行けたら行くぜ!ストリートライブ」
『・・・い、行けたら行くって人に限って来ないんだよ?』
「じゃあ絶対行く!今夏休み中だし明日の夜に駅前の公園行く!」
『・・・!うん・・・!待ってる!』
「じゃあ気を付けて帰れよ!」

そう言って彼は手を振り、私も手を高くあげて手を振った。

明日、また彼に会える。
それが嬉しくて自然と笑顔になる。
なぜだか、まだ彼に見られているような気がして急に恥ずかしくなった私は走って家へと帰った。

玄関に入ってリビングの壁に掛けてあるカレンダーの24日を丸で囲む。

この日までに新しい曲を完成させよう・・・───。


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テーマ「人外ファンタジー」
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