今日も夜になっていつもの公園へ行く。
ギターとビデオカメラを持って。
最近はビデオカメラを見ながら彼も歩いていたであろう道を通って公園へ向かう。
ビデオカメラの画面には、昼の商店街を歩く彼の後ろ姿。
私は夜の商店街を歩く。
こうして彼と同じ道を歩けているだけで嬉しい。

公園からの帰り道はあのバス停へ。
ビデオカメラの中の彼は自販機で買ったスポーツドリンクを飲んでベンチに座っている。
私も彼と同じスポーツドリンクを買い、彼が座っていた横に座る。

実際に会ってできたら、どんなに幸せだろう・・・。

そう思いながらケースからギターを取り出した。
さっきも歌ったばかりなのに、今とてつもなく歌いたい気分になった。
新しく曲が出来そうなのだ。

思いついたコードをリズムに乗せて弾き、でたらめな英語で適当に歌詞を付ける。
一度弾き出すとなかなか止まらなかった。
こんなにスムーズに曲が出来上がっていくのは初めてではないだろうか・・・。
無我夢中で弾いていると視線を感じ、閉じていた目を開けて驚いた。
たった今まで思い浮かべていた人物が目の前にいる。
あまりに驚いたのでお互い口を開けて固まってしまった。

『・・・・・・こ、こんばんは』

咄嗟に口から出た。

「こ、こんばんは・・・」

赤髪の彼も驚いているようだ。
この前突然ぶつかってきて、いきなり滅茶苦茶な自己紹介をした女が、今度は夜のバス停のベンチで歌っているのだ。
驚いて当たり前だろう。

「お前・・・この前の・・・・・・」
『あ、うん。・・・この前はごめんなさい』
「いや・・・、それはもういいんだけどさ」

妙な空気が流れ、気まずい雰囲気になる。

「こんな時間に何してんの・・・?」

今度は彼から口を開いた。

『あ、あの、う、歌った帰り・・・。駅前の公園で歌ってるの』
「あ、あー・・・。何だっけ・・・、ほら、"ストリートライブ"ってやつだっけ?」
『うん・・・』
「へー、今歌ってた曲いい歌だよな!何てやつだったっけ?」
『まだ決めてないの』
「え?自分で書いたの?」

彼の言葉に頷いた。

「そりゃあすげーな!」
『そっちは?テニス部なんでしょ?』
「お、やっぱテニスバッグで分かる?今日の練習めちゃくちゃハードだったんだよなー。まぁ俺は天才的だから全然苦になんねぇけどよい」
『そっか、お疲れさま』
「サンキュー!ってか隣いいか?」
『え?あ、うん』

彼は私の隣に腰掛ける。

さっきまで本当だったら幸せだろうなって思っていたことが、現実になった・・・───。

それから二人でしばらく話し込んでいた。
さっきまでお互い驚いてぎくしゃくしていた事が嘘のように───。



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