必死で走っていたのにいつの間にか見失ってしまった。
それでもあちこち走り回って彼を探す。
二つ目の角を曲がろうとすると、真っ直ぐ進んだ先の踏切に彼はいた。
電車が走っているため踏切の前で立ち止まっている。
また全速力で走った。
あと数メートルというところで彼が歩き出す。
私はそのまま彼に突っ込んだ。
「いっ・・・てぇ」
勢いよくぶつかってしまったため、彼は受け身を取れずに派手に転んでしまった。
『はぁ・・・はぁ・・・、名字名前です・・・!』
「な、なんだよい!」
『名字名前です・・・!』
「・・・は?」
『名前は・・・名字名前です!』
「お前・・・何言ってんの・・・?」
『年は17歳です!両親と暮らしてます!性格はちょっと短気です!好きな動物はイルカで、趣味は音楽で、好きなアーティストは・・・誰を言ったらいいのか・・・』
「な、なぁ・・・」
『好きなイチゴは食べ物で、彼氏はいません!一人もいません!』
「落ち着けよ、な?」
『ずっと見てました!ずっとずっと見てました!彼氏はいません!』
走ってきたせいで未だに息切れが激しい。
「ちょっと名前!」
後ろから親友の声が聞こえ、突然腕を引っ張られた。
「ちょっとごめんあそばせ」
「あ、な、ちょい待てよ!」
彼が叫んでいる声を無視して親友は私の腕を引っ張り続けた。
角を曲がった先のところでようやく解放される。
『ちょっと!何するの!?』
「何するの!?じゃなくてねー、私は今、あなたをピンチから救ってやったの!」
『救う!?救うって?』
「名前は今、おもいっきりフられるところだったの!それを救ってやったのよ!・・・大体、"好きなイチゴは食べ物"って何?」
そういって親友は腹を抱えて笑い出した。
途端に顔の周りが熱くなった。
とんでもない事をしてしまった・・・ような気がする・・・・・・。
『も、もう帰ろ!』
まだ笑っている親友の隣を歩き、公園へと戻っていった。
ギター、置いてきたままだ・・・・・・。