「名前ー、起きなさい。」

1階から聞こえた母親の声で目を覚ました。
覚醒仕切ってない頭で階段を降りる。

「ご飯できたわよ」
『うん』

テーブルにはオムライスとサラダが3人分置いてあった。
自営業で飲食店を経営している両親の料理は絶品だ。
両親にとっては夕食、私にとっては朝食だである。
夕飯を食べ始めている父親の前に座った。

「今日も行くのか?」
『うん』
「あまり遅くなっちゃダメよ」
『わかってるよ』

私には毎日通っているお気に入りの場所がある。
駅の近くにある小さな公園。
駅の近くということもあって夜でも明るく人通りも少なくないのだ。
そのお気に入りの場所に毎晩通う。
ギターを手に持って。

『じゃあ行ってくるね』
「気をつけていってらっしゃい」

母の声を背に家を出た。

「しかし毎晩出歩いて危なくないか?」
「駅の近くだし、交番も傍にあるんだから大丈夫じゃない?それに、あの子の行動をこれ以上制限するなんて出来ないわ・・・」

公園の外灯の下は私のもっともお気に入りの場所だ。
今日も私一人だけらしい。
先程から車や人は通るが、公園に入ってくる者は誰もいない。

やっと一人になれる・・・───。

外灯の下に座り、ケースからアコースティックギターを取り出した。
空を見上げて深呼吸する。

If want to you
I can save you
I can take you away from here
So lonely inside
So busy out there
And all you wanted
was somebody who cares


しばらく歌って、腕時計に目をやるとPM:10:00を回っていた。
ギターをケースにしまい、来た道を戻る。

『ただいまー』
「おかえりなさい」
『部屋にいるね』
「冷凍庫にアイス入れてるわよ」
『あとで貰うー』

部屋に戻って窓を開けると潮の香りが入ってくる。
部屋から見える景色も私のお気に入りの一つだ。
住宅街の向こうに見える海、家のちょっと前には小さなバス停が見える。
今は暗いが、昼には部屋全体が日陰になり綺麗な青が視界に広がるのだ。

こうして静かに過ごしながら、タイヨウが昇るまで時間をつぶした。

あと数時間で私の1日が終わる。


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