歌い終わると大きな拍手が鳴り響いた。
少し照れ臭くなって俯いてしまう。
すると頭を撫でられる感触がした。
驚いて顔を上げると、目の前には笑顔の彼がいて、私の頭を撫でていた。

顔が熱い・・・───。
何度目だろう───。

それから二人で自転車置き場に戻る。
お互い無言だったけどすごく居心地が良かった。

彼は来た道ではなく違う道を通る。
どこに行くの?なんて訊く気になれなかった。
もっと一緒にいたい。
ずっといたい。

「着いたよい」
『ん?』

そこは海だった。
多分家の近くの、あのいつも窓から見ている海だろう。
浜辺へと続く階段の一番上に座る。
彼は二、三段下のところに座った。

「さっき凄かったな!ホント、うまかったし、最後の曲って、あの時の・・・だよな?」
『うん。早く聴かせたくて・・・』
「そっかぁ。サンキューな!」
『ううん』

彼の笑った顔はすごく好きだ───。

「俺はテニスぐらいしかねぇもんなー。・・・そのテニスもあとちょっとしか出来ねぇけどよい。将来はさ、CDデビューとか考えんの?」
『・・・ううん。そういうの、考えたことないや』
「マジかよい!?俺だったらデビューとか目指そうって思うけどな」
『うーん・・・』
「あんなに上手いんだから、大丈夫だろい!絶対なれるって!」
『・・・・・・ありがとう』

ダメだ・・・───。
これ以上聞いたら泣いてしまう・・・・・・。

「俺はこれからどうすっかねー。やりたいことって思い付かねぇな」
『・・・・・・これからなんだって出来るよ』
「ん・・・?」
『まだまだこれからだよ。テニスだって続けられるよ。生きてるんだもん。やりたいこと、挑戦できるよ。友達とも、家族とも、・・・大好きな人とも。今諦めちゃったら、勿体無いよ・・・』

───しまった。
こんなこと真面目に言ったら変に思われるかもしれない。

「そっか。・・・そうだよな!なんか俺って単純だなー。・・・後輩みてぇだ」
『え?』

後輩ってあの黒髪の子かな・・・?

彼は階段から立ち上がって、大きく深呼吸した。

「丸井ブン太です!趣味は・・・テニスとケーキ作りと、ボーリングです!彼女はいません!」

そう言った彼は私の目の前へとやってくる。

「俺と付き合ってください!」

嬉しくて泣きそうになった───。
私は頷いて返事をする。

病気なんて関係ない・・・───。
・・・──関係ないよね・・・・・・?



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