名前との会話は楽しくて、かなり話し込んでしまった。
どこに住んでるのか、そう聞くと細くてスラッとした綺麗な指が指した方向を見る。
思ったよりも近いんだな・・・──。
『ずっと見てました!ずっとずっ と見てました!彼氏はいませ ん!』
ああ、そういうことか───。
毎日通っているこの道であの家から見られていたのか。
そう思うと今までとってきた行動を思い出し、急に恥ずかしくなる。
いつも三人で馬鹿やっているところを見られているかもしれない・・・。
「そっかー。なんか恥ずかしい な。変なこと出来ねぇよい」
俺がそう言うと名前は目を反らして俯いてしまった。
彼女のセミロングの髪で顔は隠れて見えない。
白い肌に全く焼けていない黒い髪はよく似合う。
ピーピー
俯いた彼女をしばらく眺めていると、時計か携帯の音がした。
名前が腕にしている時計だった。
『私そろそろ帰らなくちゃ』
ギターを持って立ち上がった名前。
もう少しだけ話していたかった。
このまま別れるのはなんとなく嫌だった・・・。
「なぁ!」
咄嗟に呼び止めてしまった。
彼女が振り返る。
何か・・・・・・、何か言わなければ・・・。
「今度行けたら行くぜ!ストリートライブ」
口から出た言葉がそれだった。
『・・・い、行けたら行くって人に 限って来ないんだよ?』
「じゃあ絶対行く!今夏休み中だし明日の夜に駅前の公園行く!」
『・・・!うん・・・!待ってる!』
「じゃあ気を付けて帰れよ!」
彼女に会う約束が出来た・・・。
それも明日の夜───。
きっと今の俺は気持ち悪いくらい笑顔だろう・・・。
おもいっきり手を振り、小走りで帰って行く名前の姿が見えなくなるまで俺はバス停に突っ立っていた。
明日の練習はいつもより気合いが入りそうだ・・・───。