「「「お疲れさまでした!!」」」
テニス部の練習を終えたあと、コート内の片づけをして部室に入る。
「そうじゃ、ブン太」
「うん?」
「赤也が久しぶりにお前さんと飯食いに行きたいとか言っとったぜよ」
「あー、アイツが部長になってから会う機会減っちまったもんなー」
「今日は確か中等部も俺たちと同じ時間に終わるはずぜよ」
「じゃあ久しぶりに誘うわ。仁王も来るだろい?」
そうして、赤也、仁王、俺の三人でファミレスに行くことなった。
久しぶりに会った後輩はどこか大人びた気がする。
ほんの数ヶ月離れていただけなのに。
いつも通りメニュー表のほとんどのスイーツを注文し、三人で前みたいにくだらないことで笑い合う。
帰る頃にはすっかり遅くなってしまったが明日からは夏休みで、授業は無いし練習だけだ。
練習はそれなりにキツくても、授業が無いというだけで気持ちが楽だった。
二人は姉が迎えに来るらしく、俺はその日一人で帰った。
いつものバス停が見えてくると、ギターの音色と歌声が聞こえてきた。
「なんだ・・・?」
バス停に近付いていくと、ベンチに女の子が座っていた。
俺と同じ年くらいの子。
しかも、よく見るとこの前俺にぶつかってきたやつ。
なんていったっけ・・・。
名前は確か、名字名前。
相手は俺に気づいていないのか、ギターを弾きながら歌い続けている。
──・・・すごく綺麗な声で、気持ちよさそうに歌っていた。
その子から目が離せなくなった。
名前がこちらを向くと目が合った。
気まずい空気が流れる。
・・・やべ・・・・・・、どうしよ・・・。
『・・・・・・こ、こんばんは』
名前の口から出てきたのはそんな言葉だった。
俺も咄嗟に口を開く。
そしてまた変な空気が流れる。
何か言わなければ・・・。
「お前・・・、この前の・・・・・・」
俺がそう言うと名前はあの時のことを謝ってきた。
ぶつかってきて、訳の分からない自己紹介を勝手に始めて本当に驚いたが、別に今更何とも思っていなかった。
「今歌ってた曲いい歌だよ な!何てやつだったっけ?」
歌詞も英語だったし、聞いたことない曲だったけど、いい曲だと思った。
『まだ決めてないの』
決めてない・・・──?
自分で作ったのか?
俺がそう聞くと嬉しそうに頷いた。
それからしばらく話し込んだ。
テニス部のこととか、立海のこととか・・・。
俺の話ばかりで名前の話は全然聞いてやれなかった。
テニスとか、あいつらの話になるとついつい止まらなくなっちまう。
今度、あいつらに名前のこと話してみっかな・・・───。