24日───。
その日は起きてからずっとそわそわしていた。
ユウナの前で歌う時は全く緊張しないのに、今からこんなので大丈夫だろうか・・・。
新しい曲はもう完成している。
夜になってご飯を済ませたあと、いつものようにギターを持つ。
『日の出前には帰ってくるね』
「いってらっしゃい」
「気をつけて行ってこいよー」
彼はもう来ているだろうか・・・。
待たせているかもしれないと思い、自然と小走りになる。
公園が近付くにつれ、エレキギターの音が聞こえてくる。
それも上手いとは言えない音だ・・・。
公園の入り口付近まで来ると、知らない男がエレキギターを手に一人で歌っていた。
よりにもよってあのお気に入り場所で・・・。
知らない男はギターをかき鳴らし叫ぶように歌っている。
終わるまで待つしかない。
周りを見回すと、彼はまだのようだ。
近くにあったベンチに腰掛ける。
「よ、お待たせ!」
優しく肩に触れられ、見上げると彼だった。
「これ何だ?」
『場所取られちゃったの』
「あー・・・、しかし、こりゃひでぇな」
彼は苦笑いを浮かべながら隣に座る。
「終わるまで待つ気かよい?」
『それしかないもん・・・。せっかく楽しみにしてたのに・・・・・・』
この日のために曲を完成させて、今頃は彼の前でその曲を歌っていたはずなのに・・・。
「なぁ、歌ってここじゃなきゃダメか?」
『え・・・?あー・・・、うーん・・・・・・』
別にダメなわけではないが、あまり遠くまで行くわけには行かない。
私は日の出までに家に入っていなければいけない。
彼には病気のことは話していないのだ。
今ここでその話をする気にはなれなかった・・・。
腕時計を見るとPM:11:41を指していた。
「俺いい場所知ってるぜ!」
なかなか答えない私に、彼はしびれを切らしたのか、半ば無理矢理手を引かれる形で着いていく。
駅前の駐輪場に停めてあった自転車を私の前に引っ張ってきた。
「後ろに乗れよい。いいとこ連れてってやるから」
『う、うん』
彼の後ろに跨がる。
手は・・・・・・。
「ちゃんと掴まってねぇと落ちるだろい。怪我でもされたらお前の歌聞けなくなっちまう」
彼は私の手を自分に回した。
私は今彼の背中に抱きついているような状態だ。
窓から見ていただけの彼に触れている。
顔が熱い・・・──。
心臓の音が聞かれてしまいそうだ・・・。
彼が自転車をこぎ出す。
どこに向かっているんだろう・・・───。