03


「この辺だと思うんだけど…」

風が吹いて髪が乱れるなんてことをまったく気にせず、マイストリーさんから貰った手紙を手に言われた道を思い浮かべながら森を突き進む。

「(同じところ回ってる。
幻術〈ウィッチクラフト〉かな)」

日の光がほとんど差し込まないため薄暗く、時々吹くかなり強い風が背中を冷たくする。

「お前が新入生?」
「えっ?」

四方から声が聞こえたような感覚。
ばっと後ろを振り向くと、肌の少し灰色の青年が立っていた。

「(つぎはぎの肌…フランケンシュタイン…かな?)」
「あれ、自己紹介する前にわかったか?
まぁいい、俺はフランケンシュタイン。
シュタインって呼んでな」

手をひらひらと振り、にへらと笑う。

「黒龍〈ヘイロン〉学園の先生、ですか?」
「そう。
迷子になってるだろうと思って来てみたんだが」

案の定だな、なんて笑っているシュタイン先生に対してあたしは少し焦っていた。
何故かはわからないけど。

「先生、この辺幻術で全然進めないんですけど」
「おう、幻術かどうか判断できるなら問題ないな。

霜月茨…
いい血を継いでる」
「?なんですか?」

後半が聞き取れなくて聞き返すも、曖昧な笑みではぐらかされた。

「茨、そこのでかい2本の木あるだろ。
そこそのまま抜けてみろ」

木の向こうに広がるのはただ暗い森に見える。
でも、そこが学園えの入り口らしい。
不安に、不思議に、思いながら、指先で木の間を触れてみる。
空間が、ゆがむ。

「ようこそ黒龍学園へ」

甘くとろけそうな低い声が、さっきみたいに四方から聞こえたような、耳元で囁かれたようなわけのわからないシュタイン先生の声がした後、あたしの体は勝手にゆがみへ全身を進めた。
なんだかぴりぴりする。



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