09


クスクス
また小さな笑い声が聞こえる。


「茨、どうしたの?」

「笑い声、聞こえない?」


挙動不審になっていると、狐金が声をかけてくれた。今のあたしにとって学園長の詳細より任務の内容より気になる存在なのだ。


「あぁ、京と東じゃないかしら」

「きょう、と、あずま?」

「俺の手伝いをしてくれる鳥の妖精だよ、おいで、2羽とも」


羽…鳥だからなのか?学園長のそばに飛んできたのは20cmくらいの可愛い女の妖精だった。気になるのは露出度の高さだろうか。


『よろしくね』

「!?」


頭に直接声が流れ込んできた。あたしが学校に着く前にシュタイン先生がやったのに似ている。これは2羽がやったんだろうか。


『そうよ、京がやったの』

『東もやったよ』

『『ねー!』』


どういう状況なのかあまりついけいけてないあたしを余所に、京と東はまたクスクス笑い始めて、部屋を飛び回っていた。


「カルチャーショック受けてるとこ悪いんだけど、本題に入らせてもらうよ」

「あ、はい」

「まずサングェ、狐金ちゃん、ファングにはモウンキャニオンに行ってもらう」


モウンってなんだろう、と思いサングェに聞こうと思ったが、苦虫を噛み潰したような表情をしていたからやめておこう。きっと今は機嫌が悪い。


「茨ちゃんはこのまま残って力の解放ね」

「は…え?」


はい!と元気よく返事するつもりが、力の解放、というよくわからないフレーズによって疑問形へと変わってしまった。3人も疑問に思ったらしく、一斉に向けられる視線が居心地悪い。


「どういうことです?」

「聞いてないかい?茨ちゃんはミストの娘だ。魔力を持っているのは当然だろう」

「確かにそうですけど…魔力を欠片も感じませんわ」

「じゃあ覚えておくといい。産まれて間もない赤子の時に魔力を封じると育たずに、0の状態を保たれる」


こんなところで新しい知識を身に着けることになるとは。今の話で、あたしがまったく魔女の力を自覚していないのが理解できた気がする。それはみんな同じだったようで、ぴしりと固まったまま動く気配がない。優秀な3人がこの状態なのにあたしって能天気なのかな。というよりもあまり重要なことだと思えてないのが問題なのかな。

あたしって何なんだろうか。


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