05


シュタイン先生はあたしに地図を渡して、教室に行くように指示した。
先生の部屋を出てからすぐ、

「…いけるかな」

方向音痴らしい(認めたくないけど)あたしが1人で教室まで行けるだろうか。不安でならない。

「あらぁ…?あなた新入生?」

おっとりとした艶のある声がした方を向くと、お色気むんむんのお姉さんがあたしのことを不思議そうに見ていた。

「あ、はい。黒龍組に行きたいんですけど…」
「黒龍?近くまで行くし、連れてってあげるわぁ」
「ありがとうございます!」

よくその人を見てみれば、なんともセクシーで男じゃなくてもドキドキしてしまう。
ピンクの、体に密着したナース服を着崩し、豊満な胸によってつくられた谷間を惜しみなく見せている。

「(…たにま…)」

自分のを見てとても悲しくなった。

「あ…あの、お名前は?」
「エンフェルメラよぉ、茨ちゃん」
「へっ?あたしの名前…」
「有名人だものぉ」

くすくす笑うエンフェルメラ先生は少しだけ幼く見えた。

「あたしが有名人って…」
「この学園はエスカレーター式だから新入生なんていないのよぉ。
だからみんな茨ちゃんのこと知ってるわぁ」

なんてこった。
あんまり目立たないように生活していこうかと思っていたのに。

「それより、」

艶めかしいため息交じりの言葉に視線を上げる。

「すごいわねぇ、黒龍組なんて」
「え、そうなんですか?」
「この学園一優秀なクラスだもの」

どうやらあたしが生活をはじめる黒龍組は技術・体術・頭脳の三拍子そろった天才たちが集まっているらしい。
ちなみに白虎(バイフウ)、藍蛇(ランシェ)、紅猫(ホンマオ)と続くそうだ。

「ほら、そこの教室よぉ。
何かあったら保健室にいらっしゃい。紅茶でもだしてあげるから」
「わかりました」

ウインクを一つ残して去っていくエンフェルメラ先生は後姿まで色気を放っている。
うーん…腰のラインが悩ましい。
…あたし変態だっけ…
ちょっと自分を疑ったあと、意を決して扉の前に立つ。
すごく立派な扉に、黒い龍が描かれている。
威圧感が半端じゃない。

…嗚呼、生きていけるだろうか。



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