夕涼み


土木/甘/音都



俺の星が、乾燥して暑くてとてもじゃないけど我慢できない日、木星の家に行くのが習慣になった。もうずいぶん前に。そして2人で縁側に座って(木星の家は和風なんだ)まったり語らうのも日課になった。


「…大丈夫か?」

「なんとかね。木星の家来るの遅くなってたら溶けてたかもしれない」


けたけた笑うと木星も笑ってくれた。はんなり笑う様は、別に太陽なわけじゃないのに温かだ。木漏れ日みたいな優しい光。


「今飲物でも持ってくる。何がいい」

「こないだの桃のやつ、美味しかったなあ、なんだっけ、白桃烏龍?あれがいい」

「わかった」


隣にいた木星は静かに腰をあげて、飲物を取りに行ってくれた。なんだかほんとに良妻って感じ。俺嬉しいな。言ったらまた呆れられるだろうけど。それより、なんて木星の家は心地いいんだろう。緑が生い茂って、小鳥たちの囀りも聞こえる。こういうところで過ごしてたら木星みたいな奴が育つのかな。


「おまたせ」

「ようかん!」

「めざといな」


ふ、と笑うと、俺の隣に座って、お茶とようかんの乗った御盆を間に置いてくれた。よく冷えた、水ようかんだっけ、に白桃烏龍、どちらも俺が木星に教えてもらって大好きになったもの。俺の星にはないからすごく新鮮だった。


「つめたー!うまー!」

「それは良かった」

「木星の家にあるものはなんでも美味い」

「なら月の家の食べ物も合うかもしれないな。私のところとよく似ている」


確かに着ているものも似てるし、きっと文化が似てるんだろうな。それにしても美味い。止まらなくなる。そう思っていると、すと新しい水ようかんを差し出される。


「食べるといい」

「木星のだよ」

「食いっぷりがいい奴を見るのは気持ちがいいし、まだ他にもあるからな、遠慮するな」


ありがとう、と言って受け取るとすごく嬉しそうな顔をされて、ちょっとだけ反応に困ってしまった。そんな顔をさせるようなこと、してないと思うんだけど。


「涼しい…」

「日も落ちてきたからな。それに此処は木が多い」

「俺のとこ、植えてもすぐミイラになるよ」

「そうか。まあ、私の家に涼みにくるといい、茶ぐらい出すさ」


そう言いながらお茶菓子まで出してくれるのが木星の良いところだよね。ああ、口元がにやけてしまう。それを隠すでもなく木星の膝に頭を乗っけると、驚いたように息を一瞬つめたのがわかったけれど、すぐ頭を撫でてくれるようになった。
毎日じゃなく、限界に訪れ木星に会うっていうのが、いい距離感なのかもしれない。慕う気持ちはいつでもあるけど、そんなもの比じゃないぐらい、愛おしい、そんな時間。


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