aphrodisiaque



太月でほんのり性的

後悔先に立たずって言葉を今更ながら思い出して、とりあえず自分を殴る。と言っても力が入らなくて痛くはない。そのことに更に腹が立つけどそれどころじゃない。

体が熱い

主に下半身。はふ、と漏れる息も熱くて、多分顔は真っ赤なんだと思う。リビングの床で倒れながらさっきのことを思い返す。こうなったのはSM女王冥に責任があるんだ。





「太陽くん遅い」


突然呼び出されたと思ったらこれだ。ひくりと口元が引き攣るけれど、正直いつものことだ。何を言おうと変わることはないし、まず気に止められることはないだろうから何も言わない。


「で、どうしたの、急でびっくりしたよ」

「うん、あのね、嗚呼ここで話すのもなんだし、地球のカフェか何処かに行こうよ。僕ケーキ食べたいんだよね」

「え?あ、わかった」


美味しいとこ知ってるよーと言いながら、地球に向かって歩を進める美少年。中身が残念すぎるよ。見た目だけなら確実にネコだと思うんだけどなあ、なんて顔を見ていたら睨まれた。





カフェに到着して、注文を済ませてすぐ、冥は一度トイレに立った。その間にケーキやら飲み物類が運ばれてきて、僕は先に食べさせてもらった。紅茶の美味しさぐらいなら僕だってわかるよ!


「あ、もう来たんだ」

「うん、お先に頂いてます」

「僕もたーべる」


余程嬉しいのか、珍しくふわりと笑ってフォークを持った。可愛いなあ、黙ってれば。口を開いた瞬間魔王降臨だから。


「で?どうしたの?」

「あー、これあげる」


そう言って取り出されたのは綺麗な小瓶。中には淡い桃色の液体。え、そんなベタなー。


「め、冥、これ、」

「媚薬だけど」

「ですよねーっ」


頭を抱える僕とは反対に、彼は悠々紅茶を口に含んでいる。優雅でお美しいですねくそったれ。


「い、いらないからね」

「ええー?月くんが淫らにおねだりして、あわよくば自分から襲ってくるかもしれないのに?」

「うっ…!やめろ!萌える!」

「ほらほらあ、あげるってば」

「だめ!どうせ火星に試す前のサンプル集めでしょ!」

「だから何」

「うおおおおお」


頭の悪い僕では彼を論破できません!


「はあ…そんなに受け取りたくないの」

「だって月に万が一何かあったらどうするの」

「何、僕の魔法が信じられないって言うの」


ぎろりとひと睨みされて僕は縮こまる。怖い。まじ魔王様怖い。


「ふんっいいもんにい様にあげるから」

「金星ごめんね!」


そのかわり、そう言いながら立ち上がった冥。


「ここのお金払ってね」

「鬼!」





まあ、こんなやり取りをして帰ってきたわけだ。勿論代金はきっちりとお支払いしましたよええ。
帰ってきて少ししたら、こんな状態になったのだ。

どうしようこんな時に月が来ちゃったら。絶対押し倒す、よなあ。


「っ…」


こんなこと考えただけで興奮しないでよ…!普段から頼りない僕の理性はいつもより情けない。声聞いただけでイったりしたら笑えない。でも有り得る。


「あは、つれえ」


駄目、限界。どうにかできると思ったけど、流石は冥といったところか、発散しなきゃ収まらない。

頼むから来ないで。

でも世というのは無情なもので。僕の家のインターホンが主を呼ぶ。気配からして月で間違いない。居留守っていう手もあるけど鍵かけてない。


「たいよう?」


ずくんと脈打つそれは、辛うじていかなかった感が半端じゃない。呻き声を漏らしながら、立ち上がろうと力を入れる。でも体は上がらなくて、頭を床に打った。痛い。


「た、たいよ、どうした?」


気付かないうちに家に入ったらしい。心からの心配の声が僕に降り注ぐ。やめて興奮する。

押し倒したい乳首食べたい慣らしてないアナルにぶっこみたい月の泣き顔が見たい犯したい

そこまで考えがかけ巡って、なけなしの理性が近づいてきた月の手を叩く。


「なっ…」

「ごめ、近づかないで、おねがい」


狼狽える声。目の前には紫色の袴が見えてる。あー、いい匂いがする、特に首筋や項なんかは汗と混ざってこの上ない興奮材料になるんだよね噛み付きたいな。
また邪な考えが浮かぶ。僕はそれを、床に頭を打ち付けることで払おうとした。


「おま、何してるんだ、やめろ!」

「だからっ、寄るなって!」


ばっと顔をあげると月は目を丸くした。


「おい、顔、赤いぞ」

「さわ、ないで」

「…媚薬か何かだな」

「え、」


ため息をついた月は優しく俺の頬を撫でる。だから触んないでよほんと、今にでも襲い掛かりたいんだから。


「冥がここに来るよういいに来たんだ」


は?


「今頃苦しんでると思うって」


え、何?え?


「だから、何となく察しはついてた。でも来た」


そう言って羽織っていたものを床にパサりと脱ぎ捨てる。そして袴の結び目に手をかけてしゅるりと解き、色のついた長襦袢だけ、というなんとも美味しい状況を作った。


「な、ちょ、月」

「発散する以外治らないらしい」

「だろうね、でも、だめだって、」

「別に、俺はお前が思ってる程弱くねえよ。多少乱暴でも、女とは違うんだ、壊れたりしない」


僕の手を取って、月が月の心臓に持っていく。そしてするする、ゆっくりおろしながら


「抱け、太陽」


僕は噛み付くように口付して、長襦袢と肌襦袢を同時に剥いて体中を貪ったのだった。




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タイトルは仏語で媚薬


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