自業自得!



副題 : 攻めを幸せにしてあげよう企画第2段。第1段はこの前の冥火。


月の家に泊まった翌日
自宅に戻り全身に少しの倦怠感を感じて眠りにつくと、朝起きたときには寒気が襲い咳が止まらず鼻水ぐしゃぐしゃ、熱でフラフラーなんていうあまりにもテンプレートな風邪の症状に陥っていた

「さぶっ…こだつプレイとかいっで…ずびっ、調子、のりずぎたかなぁ?」

自分以外に誰も居ない部屋で月の家に泊まった夜のことを思い出しポツリと呟くと鼻声で凄く変になった声が響く

「月あったかがったな゛ぁ…」

月のことを思うだけで冷えた身体が心なしか暖かくなった気がしてきて、また冷える前に寝て治してしまおうと布団の中に身体を丸め再び眠りについた








ピロっと紙をめくるような音と人が動く気配がしてふと意識が浮上した

よくよく嗅ぎ慣れた臭いがして、ぼやける視界をさまよわせればこの世で一番に愛しい人の姿が見える

「す、き…?」

掠れてしまった小さな声で名前を呼ぶと文庫本に視線を落としていた月がこちらに目を向けて頬をぺちんと叩かれる

「そうだ、お前の大好きな月様だ」

「な゛んれ…?」

「何でじゃねぇよ、急に音信不通になりやがって」

「え?」

「メール、みてみろ」

言われて枕元の携帯に手を伸ばすと数件のメールと着信

「あ…」

いつもであれば月からのメールにはすぐに返しているし、電話にも3コール以内で出ていたのだが寝込んでいて全く気がつかなかったらしい

「お前全然電話出ないし、メールも返さないから心配して来てみたらこのザマなんだもん」

「ごめんなざい…」

「全く…こたつプレイとかいって風邪引いてりゃ一番良いよな」

「ごめんなじゃい…」

「辛いんだろ、喋んなくていいから、お粥あっためてくるからちょっと待ってろ」

「はや゛く、ずびっ、帰ってぎてで…」

よしよしと髪を撫でて立ち上がる月を目で追いかけると、ちょっとだから待ってろと優しい声で諭される

なんか幸せだなぁ…風邪引いて良かったかも



少ししてから盆に小さい土鍋と水を乗せて運んできた月を見つめるとお前どんだけ寂しんぼだよ笑われる

「食えるか?」

「…たぶん?」

「フーフーしてやるから、ちゃんと食えよ」

「たべる!」

「まず水飲んで、フーフー…ほら、あーん」

「はふ…」

起き上がり、コップを受け取って月に食べさせてもらうと風邪も1秒で治った気がしてくる

「うまいか?」

「おい゛じい!」

「そーかそーか、早くよくなれよ」

「うん」

残りの分も熱を吹いてからあーんのオプション付きで食べさせてくれ、あっという間に土鍋は空になってしまった

「全部食べたな、えらいえらい」

「僕えら゛い?」

「おぅ、それにこの薬飲んだら最高だな!かっこいい!」

「飲む゛!」

粉薬なんて苦いだけだし、出来ることなら自然治癒力だけで何とかしようと思っていた僕だけど月にここまで言われてしまったら飲まない訳にはいかない
意を決してサラサラと粉末を舌の上に乗せて水で流し込むと覚悟はしていたものの、かなりの苦さに涙が出そうになってきた

「よくやった、太陽!最高!」

「やっだー!」

Vサインをして布団に潜ると、暖かくなって安心したのかウトウトと緩やかな眠気が襲いかかってくる

「眠いのか?」

「うん‥」

「だったら寝ちまえ」

「つき、どっかいかな゛い?」

「居るよ」

「ずっど?」

「ずっと」

「ねる…」

「おやすみ、治ったらまたキスしてやるから早くよくなれよ」


だんだんとぼやぼやになっていく意識の中、最後に月の声が耳に入って溶けた

風邪で優しい月も良いけど、大好きな月と早くキスしたいから、早くよくなればいいなぁ…





「(目を覚ませば、一番近くに君が居た)」









「…寝たか?」

粥を食べて、落ちるように眠った太陽に小さく声をかけるとぐっすり深いところまで落ちてしまったらしく、規則正しい寝息だけしか聞こえない

他の惑星達や全てのものから愛される整った顔が、先ほどまで見る影も無く熱と涙と鼻水でぐっしゃぐしゃに崩れていたことを思い出しくすりと笑いが漏れてしまう

あんなお世辞にもかっこいいなんて言えない様なきったねぇ顔すら愛しく思えるなんて俺も大概だね

ヘタレで甘えたで、風邪引いたのだって元はと言えば全て太陽自身に原因がある

でもそんなダメダメな太陽が可愛くて仕方ないんだ

なぁ太陽、早くよくなって、今日みたいなガラガラの小さい声じゃなくて、元気な声で名前を呼んで

たまにはエッチなこともしてやるから、そんでたくさんキスしようぜ


「…なんてな」





「(月だけが知る秘密の告白)」





      END
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