それは食べ物ですか?


太月、地、木/ギャグ/音都



僕の可愛い可愛い恋人月は、基本的に完璧な男だ。尊大な態度をとることもあるけど、それはツンデレのツンが発揮されてる時だから可愛くしか見えない。デレるとそれはもう理性を保っていられないぐらい可愛い。兎に角月はすごい奴なんだ。

そんな月が苦手なもの、それは虫。

それすら愛おしく感じてしまう僕は末期だってことぐらい自覚している。でもだってほら、こんなに可愛いんだもん。


「月、もう大丈夫だってー」

「…」

「すいません太陽さん、僕のせいで…」

「地球は悪くないよ!僕は美味しく頂いたからねー」

「…美味いのか?」

「キャラメルポップコーンみたい」

「ああ、確かにそうかも」


こうなったのは数十分前にさかのぼる。


―――――


「太陽さーん!」


元気な声で名前を呼ばれて振り返ると、そこにはコップか何かをもった地球の姿。ちなみに月も一緒で、一緒に呼び出されたのだ。


「どうしたんだ、突然」

「えへへ、普通じゃなかなか食べられないもの持ってきましたよ」

「なあに、それ」

「じゃーん!はちのこでーす!」


キラキラ笑顔を浮かべながらコップの中を見せてきた。中には煎られたらしいはちのこ。月絶句。僕もちょっと引いた。


「え、地球、それ食べるの」

「はい、美味しいですよ」


そう言うと中身を引っ付かんで、躊躇なく口へ運ぶ地球。飲み込むところまで見届けると、月は僕のポンチョを引っ張った。でもその自覚はないみたいで、視線は地球に向いたまま。


「太陽さんも月さんもチャレンジしませんか?」

「ひっ」

「僕チャレンジする!」

「な?!」


太陽、いっきまーす!
味は、まあ、不味くはない。焦げの具合はお菓子みたいで、外はカリッと中はトロッと的な食感。


「うん、いけるかも」

「ですよね、月さんどうしますか」

「や、やだ!」


やだって、やだって…!
そんな可愛い言い方しないでよ興奮する。なんて口が裂けても言えないけれど。余程嫌みたいだから勘弁してあげた方がよさそうだ。


「見たいで口に含んじゃえば美味しく終わりますよ?」

「確かに、あーんしたげるか?」

「っ…!それなら自分で食った方がましだ!」


勇気を振り絞ったらしく、そろそろと手を伸ばす。よく見ればうっすら涙を浮かべていて、うーん、これは食べたら泣くか吐くなあ。まあ受け止めるからいいんだけど。
コップの中まで手を入れて、いよいよ指先が触れそうだ。

うにっ

「ひぎゃあああああああっ!!!!」


絶叫しながら抱きつく月。予想外の反応。どうしたのかよく分からないでいると、月が半べそかきながらこっちを見ていた。


「う…っうにって…した…!幼虫!」


どうやら感触が気持ち悪かったらしい。多分生きている状態に直結したのかな。


「つき?」


落ち着いた声の主は木星だった。月の絶叫を聞いて、たまたま近くに居たから寄ったのだと言う。優しい。


「あ、木星さんは如何ですか、はちのこ」


「ああ、頂こう」


一連の動作はお菓子か何かを貰うみたいに自然で不思議だった。え、それはちのこですよ、木星ったら。


「太陽さんも食べますか?」

「え、ああ、うん、じゃあ貰う」


そして冒頭に至るのだが月はすっかり背に隠れてしまって、ぶつぶつ文句が聞こえる。蜂滅亡しろ?うーん、難しいねえ。
全部消費した後も月は背中から出てこなくて、コップを威嚇してるみたいだ。猫みたい。可愛い。


「はちのこなんて、食べ物じゃない」

「あはは、昔はタンパク質を摂取するための貴重な食べ物だったんですよ」

「俺は人間じゃない」

「一理あるな。時に地球、今回のやつ水責めにしてから煎っただろう。取ってそのまま煎った方が美味いぞ」

「そうなんだ!」


木星の発言に、ついに月の顔が真っ青になった。





―――――
実話です。
勿論多少脚色してますが。
音都がボランティアに
行ったときの出来事で
半べそかきました。
音都のポジションを
月にしたのは間違い?
でも本当にうにって
したのです。引いた。


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -