:: 3周年 | ナノ


誰も彼もが、一度は経験したことがある青春時代。それは一瞬にして過ぎ去ってしまうものだけど、それでも、人生の中でその瞬間ほど輝いているものはない。だからこそ、その思い出以上に魅了されるものなど、この世に存在しないのだ。

思えば、私は青春時代にたくさんの仲間たちと出会った。
立海のみんな…。氷帝のみんな…。

それに…。

「名前さん、荷物これで全部っスか?」
「うん。これで全部だよ、光」

それに、光に出逢えた。光との出逢いは、運命のような偶然が重なり合って生まれたものだった。

最初は、臆病者だった私がその性格を治すために始めたチャットで、光と出逢った。だけどそれはネット上だけの関係で、それ以上にもそれ以下にも発展することはないはずだった。
でも、私がマネージャーとして所属する立海のテニス部と、光のいる四天宝寺のテニス部との練習試合で、ネット上のものだけだった私たちの関係は変わった。

そして、翌年の全国大会。

光が部長として率いる四天宝寺のテニス部が全国優勝を果たした。そのときに、私は光に告白されたのです。

まさか、「もし、優勝したら俺の話聞いて下さい」って言っていた話の内容が告白だなんて思いもしなかったから、あのときは本当にビックリした。だけど、返事に迷いなんてなかったの。

そして今、私たちは…。

「ちゅーか、引っ越しってこんな大変なんっスね」
「荷物が二人分だもんね〜」
「やから俺は、名前さんの家でええって言うたのに」
「私が住んでいたとこじゃ、二人では住めないよ…」

実はこの春から、私たちは同棲することになりました…!

去年までは、私が東京の大学、そして、光が大阪の高校に通っていたんだけど、今年の春から光が東京の大学に通うことになって、東京に引っ越してきたのです。

そして光の提案で一緒に住むことになったんだけど、私が前に住んでいたのは一人暮らし用のマンションだったから、二人で暮らすのには限界があって…。というわけで、こうして二人で暮らせるマンションに引っ越してきました。

だけど、一人ならまだしも二人分の荷物となると…。
うーん…。終わりが見えません…。

「やっぱり、誰かに手伝ってもらった方が良かったかも…」
「あかん」
「うえっ!?な、なんで?」
「どうせあの跡部とか幸村とか、丸井なんやろ?」
「そうだけど…」
「名前さんを独り占めするために越してきたのに、そいつら来たら意味ないっスわ」

そう言って、光は私の唇に噛みつくようなキスをした。それに驚いてバッと離れれば、悪戯っ子のような顔で笑う光。

「それにそいつらおったら、キスもできんやろ?」
「っ…!」
「ほら、二人で頑張るで」

むむ…。おかしいな。光の方が年下なんだから、ここは年上である私の方がリードするはずなのに…。それなのに、付き合ってからというもの光にリードされてばかりだ。

それが悔しくないのかどうかと聞かれれば、はっきり言って悔しい。

だって、私の方が年上でお姉さんなのに…。だから、大人のお姉さんとしての余裕みたいなのが欲しい。なんて、中学生のころの臆病な私を知っている光の前では、余裕になんかなれないけれど…。

だけど、やっぱり光のことをリードしたい!!というわけで、この同棲生活で光の弱点みたいなものを掴めたらいいと思っている。でも…。

「名前さん、それはあっちに置いといて」
「う、うん」
「それは今開けたら面倒やから、あとでにしとき」
「じゃあ、これは?」
「重いもん入っとんのは、俺がやっときます」
「えっとじゃあ、あれは…」
「ああ、あれやったら俺がやっときました」

…光って、油断も隙も無いのよね。というか、完璧すぎて弱点なんて一つもないのかもしれない。

だって、さっきから私は光に言われたことしかしてない。それに、光に聞かないとどうすればいいのか分からないし…。って、これじゃあダメだよ!このまま同棲生活が始まったら、私、光なしじゃ生きていけなくなっちゃう。

「光!!」
「なんスか。急に大声出して」
「光は、私を甘やかしちゃダメ!」
「はぁ?」

うぅ。なにその、こいつ頭大丈夫か?って顔!でも、こうでもしないと私がダメになっちゃうんだもん。だから、ちゃんと自立できるようにしないと…。

思えば、私はいつも周りの人に甘えてきたのかもしれない。ブンちゃんや精市くん、景吾たちに甘えてきたから、甘え癖がついちゃったんだ!ダメダメ!光の前では、大人のお姉さんになるんだから!

「頭大丈夫スか?」
「頭は大丈夫!」
「ほな、急にどしたん?」
「うえっ、だって…。だって、このまま光に甘えてたら私…光なしじゃ生きていけなくなっちゃう」
「っ…!」

私は、光に頼られる存在になりたいの!だから、シャンとしなくちゃ…。

そう考えていたら、急に光に抱きしめられた。それに驚いて反射的に逃げようとしたけど、私は今まで光の腕の中から逃げれたことがない。光は男の人だから、それは当たり前のことなんだけど…。

「ひ、光?」
「はぁー…」
「どうしたの?」
「あかん」
「え?」
「あんたのこと好きすぎて、俺どうにかなりそうやわ…」

そう言って、光は抱きしめる腕の力をさらに強めた。そして私は、光の言ったことにパニックになってもう逃げるという考えはどこかにすっ飛んでしまった。

だ、だって、光がまさかそんなこと言うなんて…。

光は普段、クールな性格だからかあまり「好き」とは言ってくれない。私が光のことを「好き」だと言っても、「そうスか」って言うだけで何も返してくれない。そんな光が、急にどうしちゃったの…!

いや、嬉しいんだけどね?でも、普段言わないからこそのギャップというかなんと言いますか…とにかく今、私の心臓は壊れそうなほどバクバク鳴っているんです。

「…名前さん」
「な、なに?」
「今日はもうベッドに行きません?」
「え!?で、でも、まだ片付いてないし…!」
「そんなん明日でええから…。今日は、な?」

そんな優しい笑顔で見つめられちゃったら、言い返すことなんてできない。だから私は、コクンと首を縦に動かした。

「おおきに。ほな、いきましょか」
「うわっ」

光のその言葉が合図だったかのように、ふわっと持ち上がった私の身体。それは所謂、お姫様抱っこと呼ばれるやつで…。

ああ、やっぱり、光には敵わないんだなぁ…っと、心の底から思ってしまった。

「愛しとるよ、名前さん」
「わ、私も…」

今日も、明日も、明後日も。きっと、光との関係はこれから一生続くんだと思う。だけどね、そのためには今のままの私じゃダメだと思うんだ。

いつか私も、光が甘えられるような人になりたいから。

だから、その日まで…。その日までは、私の隣でその優しい微笑みを絶やさないまま見守っていてほしい。光がそうしてくれているだけで、私は何でもできるような気がするから。


2015/08/11

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