わたしは彼女が好きだった。
綺麗で健気で真面目な彼女が何より誰より好きだった。紫の髪も特徴的な眉も口が悪くすぐ赤くなるところも好きだった。あいしていた。だから振り向いてほしかった。わたしをみてほしかった。わたしだけを想ってほしかった。


あたしは彼が好きだった。
おちゃらけてて適当で嘘吐きな彼が何より誰より好きだった。目を引くピンクの髪も垂れた目も時々みせる本当の笑顔も好きだった。あいしていた。だから応援していた。彼の恋が実るように。あたしの想いは叶わなくても、彼の気持ちは彼の想い人に届いてほしかった。


俺は彼が好きだった。
強くて格好よくて素直な彼が何より誰より好きだった。深い藍色の髪も覗く八重歯も太陽のような存在感も好きだった。あいしていた。だから見守っていた。友達という線は臆病な自分には越えられなかった。それでも傍にいたかった。それだけでよかった。


俺は彼女が好きだった。
優しくて朗らかで可愛い彼女が何より誰より好きだった。柔らかい蜂蜜色の髪も綺麗な翡翠の瞳も名前を呼ぶ声も好きだった。あいしていた。だから告白した。彼女が誰かを想っているのは判っていた。それでも俺は自分の気持ちを見て見ぬ振りをして殺せなかった。それで例え俺たちを渦巻く環境が変わっても、俺は彼女が、俺たちは一方通行に恋をしていた。



一方通行
(決して交わらない可哀想な矢印たち)


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テーマ「人外ファンタジー」
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