※短い


しえみー!ばたばたとすごい勢いで廊下の向こうから誰かがわたしの名前を呼んでいた。あ、この声。振り返るとやっぱり燐だった。キュッと靴と廊下の擦れる音がして、燐がわたしとぶつかるかぶつからないか、すれすれのところで止まる。

「なあしえみ、今日一緒に帰ろーぜ!」
「今日?うん、全然いいよー!」
「よかった!あ、雪男も今日は仕事ないっつーから一緒に帰れるって!」
「わあ、雪ちゃんと一緒に帰れるの久しぶり!」
「それでなそれでな、今日の夕飯俺らすき焼きにしようと思ってんだけど、お前も一緒に食わねえ?」
「えっ」
「もちろんお前の母ちゃんが大丈夫ならなんだけど」

突然のお誘いにわたしは少し驚いてしまったのだけど、燐と雪ちゃん、あと多分クロとごはんなんて、とても素敵!それにお母さんだって雪ちゃんがいるなら多少遅くなっても怒らないはずだ(一応あとで電話してみよう)。

わたしが、大丈夫!というと燐はとても嬉しそうににかっと笑って、じゃあ放課後な!としっぽをぴょこぴょこさせた。そのまま足音は遠ざかっていく。燐たちとごはん、燐たちとごはん!わくわくわくわく、胸がどきどきしすぎて嬉しすぎて楽しみすぎて、もうどうしよう!そのときたまたまわたしの横を通りすぎた神木さんが、

「あんたたちが喋ってると空気が透明になるわよね」

と言った。わたしは意味がわからなくて、え?と聞き返したのだけどそれに対する解説はなかった。空気が軽くなるのよ、と神木さんはまたそう言って教室に入ってしまった。どういうことなのかな。わたしはあまり頭がよくないから、やはり神木さんの言った言葉の意味はわからなかった。ああでも、空気が軽くなったら今日のごはんのすき焼きが浮いちゃうから、それはいやだなあ。


酸素とわたしとあの男子

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