神様殺害計画


 そうだ、神様になろう。ある朝突然そう思い立った男は、生暖かい温もりの残る布団から抜け出し、居間の机に装備されている引き出しの中から一冊のノートを取り出すと、ペンケースからボールペンを一本掬い上げ、下手くそな持ち方で、しかしすらすらと文字を書いた。
『神様殺害計画』
 なんと男は自分が神様になるがため、現在の神様を殺害しようとしているらしい。愚かで賢い狡猾さはまさに今を生きる人間の鑑と言ったところ。しかし男は、そんな自分を大して疑問に感じることはなかった。
 男は次に、殺害方法を考えた。全身を刃物でめった刺しにする、首を絞める、灯油を浴びせて火を付けるってのはどうだろう――せっかく神様を殺すのだからと、男は様々な殺傷方法をノートへと書き殴った。平凡じゃあつまらないんだ。これはある種の美徳だから、と。
 男は夢中でノートにボールペンを走らせた。強姦致死、過大な痛みによるショック死。エトセトラ、エトセトラ……。
「よし、こんなもんか。」
 個性豊かな殺害方法を書き上げた男は、満足、と言ったように深く息を吐いた。そして文字の羅列が浮かぶそのノートを閉じ、立ち上がった。
 ――さぁ、殺害方法のプランもある程度決まったので、あとは神様がどこにいるかを突き止めればいいだけだ。


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