休み、それは甘美な響きである。
休み、それは一日中家に引き籠っていても怒られない日である。
休み、それは─────。
 
 
 
 
「休みだー!!!」
 
起きて早々布団に座り一人叫ぶ。
時間は朝10時。
今日は喫茶うずまきの仕事が休みであり一日何も予定が入っていない。
つまり自由、何してもよし。
 
「なっにしよっかな〜やっぱり二度寝だよね!」
 
そう思ったが吉日。
私は早速布団に入り二度寝をしようとした。
 
しようとした、という過去形の表現になってしまったのは私の二度寝を邪魔するようにインターホンが鳴り響いたからだ。
 
(無視)
 
さー、寝るぞーと安眠の世界に旅立とうとしたときにもまたやインターホン。
 
(これも無視)
 
今度こそ、と思い寝ようとしたらまた鳴るインターホン。
 
(無視ったら無視)
 
居留守を使い眠りの世界に旅立とうとしたらインターホン連続鳴らしとドンドン、と扉叩く音。
 
 
(無視ったら無視の無視)
 
私が無視を決め込む度にうるさくなるインターホンとドアの音。
かれこれ10分は格闘しただろうか。
 
(無視無視無視…………)
 
ピンポンピンポン、ドンドンドン。
 
(あ"ー!!!うるさい!!!)
 
10分過ぎても鳴りやまぬインターホンとドアの音。
ズカズカと寝巻で扉に行き特に誰が相手かも確認せずにドアを開け後悔するのは後のお話。
 
 
「どちらさまでしょう──」
 
「よう。来たぜ、っておまえ寝巻…」
 
うわぁああという悲鳴とバチンといういい音が鳴ったのは数秒後のことだった。
 
 
 
ただいま私、土下座中。
目の前には足を組み座り方頬が真っ赤に腫れたおしゃれぼう───中也さん。
 
 
重い、それは鉛のように重い沈黙を先に突き破ったのは私だった。
 
「ほんっとうにすいませんでしたーッ!」
 
床と顔がこんにちは状態のまま私は片頬おしゃれちびっ子マフィ───に謝る。
床とこんにちはしてるおかげで相手の顔は見れないが、大層ご立腹だろう。
 
 
 
「…おまえとりあえずさ、」
 
「はい!」
 
「……着替えてきたらどうだ?」
 
「うえっ、あのそんな…はい」
 
私は無言の威圧と沈黙に耐え切れず痺れる足に渇を入れながら自分の部屋に戻った。
 
(そいや土下座何分もしてたもんな…)
 
 
 
そして部屋着に着替え戻ってくると中也さんは戻ったか、と特に怒ってる風でもなく声をかけてくれた。
 
「あの、怒ってないんです…?」
 
「あ"?何がだ?」
 
「怒ってないのならいいんです…。お気になさらず」
 
なんとこのちびっ───ポートマフィア五大幹部様頬を理不尽にも叩かれたのにも関わらず怒ってないようだ。
 
(心が広すぎるで…)
 
ごほん、と咳ばらいをしてから私は中也さんに尋ねた。
 
「あの、今日は一体どのようなご用件で…?」
 
「あー…一日オフになって暇だったのでお前のところに来た」
 
 
(いや、暇とかいう理由で私のところに来られても…)
 
「とりあえずおまえ朝飯食ってないんだろ?もう時間的には昼だが。何か採ったほうがいいんじゃないか?」
 
「え、ええ、まぁそうですけど … 」
 
「ならなんか作れよ。俺はオムライスがいい」
 
(え、適当に病気と楽のためにとっておいたウィンダーゼリーもどきを取ろうとしてたし作るといってもそれ提供しようとしたけど…流石に頬、殴っちゃったもんね。何かお詫びにつくらないと…)
 
「わかりました、少々おまちください」
 
私は冷蔵庫に具材あるかな?とか考えつつリビングで寛いでいる中也さんを置いてキッチンに向かった。
 
 
そして数分後。
デミグラスオムライスの完成だ。
 
こう見えても自炊は長年やってきたほうだし料理は好きだ。
 
リビングにて待っている中也さんに向け、できましたよ、と声をかければ、おう、と返事をしこちらに向かってくる中也さん。
 
「いい匂いがするな」
 
「デミグラスオムライスです」
 
「凝ったもの作れるんだな」
 
「私、こう見えて料理は得意ですよ?」
 
「一人暮らししてるもんな、自炊するか」
 
「中也さんはしないんですか?」
 
「あー… 俺はぼちぼちだな。外食が多い」
 
「体に悪いですよ」
 
「だったらお前が毎日作りに来てくれよ」
 
「……え」
 
思わず固まってしまうと冗談だ、と笑う中也さん。
 
(というかこのやり取り夫婦みたいじゃない!?考えるのやめよやめよ!恥ずかしい死ぬ!)
 
 
と、とりあえず食べましょう、と促すと、そうだな、といい向かいの椅子に座る中也さん。
 
(やっぱり夫婦みたい!恥ずかしい!!!)
 
かぁ、と頬が赤くなる自覚がある。
私はそれを無視するようにして自分お手製のデミグラスオムライスを食べる。
 
「…(我ながら美味しいと自画自賛したくなるいつもの味だ。)……、ちゅ、………中也さんはどうですか?」
 
たっぷり間を置いて尋ねた質問。
それに対し中也さんは、まずくねぇな、と一言。
 
(よ、よかったぁ…高級舌の中也さんに合った……)
 
一安心だ、これで一命を取り留めた、とほっとしながらデミグラスオムライスを食べていると前方から感じる視線。
……中也さんだ。
 
 
「な、なんでしょう … 」
 
「なんか新婚みてぇだな」
 
「 ……。…ッ!!!」
 
意味を理解するのに数秒。
意味を理解して顔が真っ赤になるのが数秒。
 
 
「へ、変なこと言うと壁にのめりこませますよ!?」
 
「おー、怖い怖い」
 
知らない知らない、と決め込み黙々とデミグラスオムライスをかきこむ。
 
────そして数分後、お互い食べ終えた私たち。
どちらともなくご馳走様、といい私はお皿を台所に持っていき水につける。
 
 
 
そしたらいつの間にかリビングに戻りどこからワインを出したのか取り出し飲んでいる中也さん。
 
(いつの間に!?グラスもちゃっかり私の家の使ってるし! )
 
私が買っておいたワインを飲み寛いでる中也さん。
帰る気配なし。
 
「 ……中也さん、いつ帰られるんですか?」
 
「あ"?今日一日ずっとここにいるぞ」
 
続けて言われた奥さん?という言葉に私は全力で帰ってください!という思いを込めてポートマフィアに中也さんを瞬間移動させた。