「志那ちゃん本当にお酒強いんだね〜」
と向かいに座ってる太宰…ではなく治が感心したように言う。
「まぁ度数弱いですし10杯飲んだからもう充分ですかねー」
あのボリューミーなパスタ+お酒(しかも何故かファジーネーブルなのにジョッキ)なのでもうお腹もタプタプである。
「それに顔色も変わってないし普通に話してたけど普通にいつも通りに返されたしこれは意外な1面だね」
「お褒めに預かり光栄でーす」
私をそこら辺のお酒弱いんだ…みたいなか弱い女性だと勘違いしたのなら大勘違いだ。
ザル…ではないと思うが強い方だとは思う。
それに度数強いのはダメだし…と思い目の前でまだウィスキーのロックを飲んでる治を見る。
(てかこれいつ解散?私もうお腹いっぱいだし何も入らないし私から言っていいの?いいの?それとも太宰さんはまだ飲み足りないのかな)
どう伺うべきかと考えあぐねていた時に太宰さんから、そろそろ解散しようか、との鶴の一声。
それに私はすぐさま返事をして伝票を持って会計に行った。
そして驚いたのがあの太宰治があの太宰治が(大事なので2回言う)お金を支払ったのだ、つけとかではなく。
思わずヒョオと変に息を飲んでしまったことについては触れないでいただきたい触れるなそんな目で見るな包帯無駄遣いマシーン。
どんな目かは私の心の中に留めておきたいと思う…としてもあのツケマシーン太宰治がきちんとお金を払ってることに驚きだし金額にも驚きである。
(というか財布常備してたんだ…)
だって常にツケ払いのあの太宰治が普通にお会計をしているのだと思わず関心のあまり違うことを考えようとする脳内を振り払い私は太宰…じゃなく治に店員さんに見送られながら店出た先でぺこりと頭を下げながらお礼を言った。
「今日は本当にありがとうございました、治。お金もきちんと払ってもらってめっちゃビックリしましたよはい」
「ここはきちんと私が持つと言っただろ?」
「そうだけど…ちょっと見直しました」
「志那ちゃんは一体私をなんだと思ってるんだい?」
「包帯無駄遣いツケ払い仕事サボり自殺したがり一応生きてる人間マシーン」
「…っぷ、あはは!国木田くんに負けないネーミングセンスの良さだね。後訂正だけど私がしたいのは自殺ではなく心中だよ。志那ちゃんいかが」
太宰さんが言葉を言い終わる前に結構です、と即答する。
(誰が太宰さんと心中するものか…嫌でも最推しと心中できるのは案外本望…?)
いやいや、と頭を振り考えを追っ払った。
「ところで志那ちゃん聞きたいんだけど1ついいかい?」
「なんです?」
「君はもう夏だと言うのになんで半袖は着ているけど腕が隠れるレッグウォーマーを付けてタイツを履いているんだい?」
「……なんでって日焼け対策ですよ」
(一瞬動揺が表に出ようとしたがバレてないだろうか、ないと信じたいけどこの人鋭いからなぁ…)
「夜なのに?食べる時も外さなかったよね。それに喫茶うずまきで働いてる時もシフト被ったらトイレで着替えるか1人でもトイレで着替える方が多い。それに君は常に体を隠している。腕や体、足などを特に」
「……これ付けてても指は普通に出てますし体ってどこ見てんですか変態。酔ってます?酔ってるでしょ」
「…そうなのかもね」
「帰りますよ、"太宰さん"」
私の呼び方にも敬語にも何も突っ込むことなく太宰さんと夜道を一緒に帰った。
ーーーー体や腕、足、特に身体については誰にも言えないことだって人間あるのだ。
その日の夜はやけに月が私たちを綺麗に照らしていた。