「きのこのカルボナーラまっだかなまっだかな〜まだかな〜」

あの後私と太宰さんはパスタ専門店フィットチーネに来てきた。

そして私のテンションは爆上げ。
何故ならきのこのカルボナーラが食べれるからだ、食べれるのだ。
あの有名で人気の大商品を。

「だざ…じゃなくて治ありがとうございます〜!私感涙しそうです」

「そんなにここのパスタ食べたかったのかい?志那ちゃん」

「はい!たまたま後輩に見せてもらった雑誌でもう一目惚れして…もう美味しそうで美味しそうで最高です!」

「志那ちゃんが雑誌読むとは思わないからやっぱり誰かの見たんだね」

「なんですかその失礼な偏見。私だって雑誌ぐらい買い…か、い……いや、いやいや、買…いますよ?ほんとですからね」

「はいはい、志那ちゃんがそういうのならそういうことにしておこっか」

「なんですかその適当な返事ー!許すまじ!」

なんてくだらない会話をしていたら運ばれてきたきのこのカルボナーラ。

(う、うわぁ…なんて神々しいんだ…!直視できない…!チーズの芳醇な香り、みただけでもわかるもっちりとした生パスタ…)


「志那ちゃん、何パスタに崇拝してるの。流石に恥ずかしいからやめてくれる?」

「…ハッ、つい神々しさに無意識に……」

「温かいうちに食べたら?」

「は、はい!…いただきます!」

パクリ、と一口。

(もっちりとした程よい硬さの生パスタ、丁度いいチーズ。…ああ、私今なら死ねる)


太宰さんは感動して思わず体をくねくねさせてる私の目の前でウィスキーを飲んでいる。
しかもロックでだ。

(ほんと顔色変わってないし何杯目かわからないぐらい飲んでるのに。お酒強いなぁ…私なら無理だ)


思わず太宰さんを凝視してたらぱっちりと目線があった。
そしてサッと顔を背ける。

(い、いや私何を今更恥ずかしがってるのよ藤宮志那)

そんな私の心境を知ってか知らずか太宰さんが話しかけてくる。


「そのパスタ本当に美味しそうだね。私も何か頼めばよかったよ」

「うえっ…、あの今からでも遅くないんじゃ…」

「ここのお酒も美味しいと有名でついそっちにいっちゃってね。……というより、志那ちゃん顔真っ赤だけど大丈夫かい?」

目の前で普通に話してくる太宰さん。
なんか私だけ意識してるみたいで恥ずかしくて俯く。

「うひっ!?……だ、太宰さんが飲んでるお酒見てるだけで酔ってきて…」

「志那ちゃんはお酒好きなのかい?」

「カクテルなら…」

「ここ、ファジーネーブルが有名らしいよ」

「えっ、ほんとですか!?」

その言葉に思わず顔を上げる。
ファジーネーブルは私の大好きなお酒だ。

「う…飲みたい……」

「ここは私の奢りと言っただろ?たまには好きな物を好きなだけ食べて飲んだらどうだい?」

「え、でもお金…やっぱり他人のお金ですし…」

「じゃあ、これは志那ちゃんへの1つお願い事を叶えてくれる約束ならどうだい?」

「…約束?」

思わず首をこてんと傾ける。


「私のことはできるだけ下の名前呼びの敬語なし。これでどうだい?」

「えっ、あ、そ、…それは、」

(漫画の時も小説の時も1番推しだった太宰さんを呼び捨てに敬語なし!?ハードル高すぎない!?)


「もし聞いてくれないならここのお会計は志那ちゃんで。あーあ、私、お酒結構飲んでしまったな〜」

わざとらしく太宰さんが言う。
幾ら安いと言ってもお酒類は高いだろ。

(かっんぺきに脅しじゃん…!しかもお財布には諭吉さんどころか500円玉1枚…)

「わか…、わかった。下の名前呼びはちょっと時間かかるけど敬語はなしにするね」

「よしよしいいこ」

そう言って頭を撫でられる。
思わず顔がカーッと再び真っ赤になる。


「こ…子供扱いしないでよね!私こう見えても治と同い歳なんだから!」

「はいはい、わかりましたよお姫様」

んもうー!と1人地団駄を踏み私は通りかかった店員さんにファジーネーブルを頼んだ。

「治の奢りなんでしょ?…私こう見えてもお酒強いからね」

ニヤリと笑って告げると治もへぇ、面白い、とニヤリと笑った。


長い夜は始まったばかりだ。