ケーキに罪はない
腰が抜けた私を安室さんは立たせてくれわざわざソファまで運んでくれた。
そして何事も無かったようにケーキ作りを再開した。
(安室さんにとったらこれは一種の遊びというか慣れなんだろうなぁ…)
なんだかチクリとした胸を無視して私はテレビをつけた。
*
やってしまった、と俺本名、降谷零は後悔していた。
(つい勢いでやってしまった…完全にやってしまった……)
乃亜が男性恐怖症とは知っていたがつい、勢いでやってしまった。
乃亜は可愛い。
ぱっちり二重、可愛い顔、短い茶髪に赤のメッシュが入った髪、そしてぷっくりとした唇。
この計画も勢いと押しでやってしまった。
つい乃亜を家に招いて新メニューという工事でデートということにしてみた。
なら乃亜は顔を真っ赤にし抵抗を見せるが俺は勢いでドナドナしてしまった。
そしてさっきの行為。
あれは無意識とはいえあの感じてる乃亜に俺も感じたし、興奮した。
そのおかげで乃亜は腰を抜かし今はリビングでテレビを見ている。
トリプルフェイスの俺だ。
人を欺くことには慣れている。
また、安室透に戻れる。
そう思った俺はケーキ作りを再開した。
*
ボーッと意味もなくテレビを見ていたら背後からかけられた声。
「乃亜さん、ケーキできましたよ」
「あ、安室さん…ありがとうございます」
「では、早速味見をして評価をくださいね」
と、目の前に出されたフルーツケーキ。
色取りどりなフルーツにフワッとしたホイップクリーム。
中の生地も柔らかそうだ。
「…では、いただきます」
と、一言添えて私は1口ケーキを食べた。
その瞬間広がるフルーツの甘みと甘い生地の美味しさ。
「安室さん、これ最高に美味しいですよ!最高です!!」
「そう言ってもらえるとありがたいです。では商品化してもいいと思いますか?」
「当然です!こんな美味しい商品売れるに決まってるじゃないですか!」
「わかりました。ではマスターには乃亜さんイチオシのケーキと伝えておきますね」
「はい!!!」
興奮してたのか安室さんとの距離も近づいていた。
それに気づき私はハッとなり慌てて距離を取る。
「あ、ああああ、安室さん、ご、ごめんなさい…!近すぎました」
「いえいえ、私は乃亜さんと距離が近くて嬉しかったですよ?」
と、安室スマイルを見せられ顔がカーッとなっちゃう。
(そのスマイルには弱いんだよ…!マジイケメン怖い)
「ははっ、乃亜さん顔真っ赤ですね」
「ほ…、ほっといてください!」
そんな他愛ない会話をしながら私の安室さん宅訪問は終わった。