私、男性恐怖症です | ナノ

予定が勝手に決められた


あの後少し遅れて梓ちゃんが到着した。
来た瞬間私は梓ちゃんに抱きついた。


梓ちゃんはよしよしと、頭を撫でてくれ私が落ち着いたのを見計らって突然抱きついた理由なども聞かずに仕事しよっかと切り出した。


その言葉に私は盛大に頷いた。




*


今日も今日とて忙しい夕方。
夕方になると安室さん目当てに女子高校生が沢山来て安室さんはそちらの対応に追われるので私としたら何も話すこともなく関わりもなく万々歳だ。


という私は今日は午前中で小学校が終わりだった天使コナンくんとのんびり話している。

「コナンくん、ブラックコーヒー飲めるなんて大人だねぇ」

「(まぁ中身は17歳の高校生だからな…)そういう乃亜おねーちゃんはブラックコーヒー飲めないの?」

「私は苦くて無理。カフェオレとかコーヒーに砂糖ミルクをたっぷり入れた自家製コーヒーなら飲めるかな。たまに入れすぎてあまったる過ぎるけど」

「へぇー…じゃあ乃亜おねーちゃんは甘いの好きなの?」

「うん、好きだよー!ケーキとかパフェとか!あとあとミルフィーユ、クレープ、プリン、タルト…」

「乃亜さんって甘いもの好きなんですか?」

「(ヒェッ…安室さんいつの間にそこに…)え、はい、好きです、よ…」

「僕、知っての通り甘いもの作るのが好きなんですよね。ケーキも大人気でしょう?」

「え、あ、まぁ、そうですね…」

「今度乃亜さんにも特製フルーツケーキ作ってきてあげましょうか?」

「えっ!?」


(安室さんお手製の特性フルーツケーキ…。魅力的でそそられる…。でもイケメンからの貰い物…でも甘いもの…天秤に振るいかけるとそりゃ甘いものだけど安室さんからの…)


「乃亜さんに試食していただいて好評だったら是非お店の品としてオーナーに交渉してみようと思いまして」

(えっ、もし美味しかったらお店の定番メニューになる!?そ、それはそれで魅力的だけど私だけの判断って…)

と思いオーナーを見るとグッと親指を立てグーサイン。

(えっ、いいの!?私の判断でいいの!?もっと他に梓ちゃんとか梓ちゃんとか梓ちゃんとか!!!)

「乃亜さんが迷惑でさえなければの話なんですけど…オーナーもOKのサインくれてますし…」

(甘いものに罪はない甘いものには罪はない甘いものには罪はない甘いものに罪はない)

「え、とでしたら私で良けれ、ば…試食、させていただい、ても構いませんか?」

「はい…!是非!今度お家に来てくださいね。その時に特性フルーツケーキお出ししますから」

「えっ!?なんで安室さんのお家に…」

「いくら車で持ってくると言っても溶けてしまうかもしれませんし、ここで作るには残業って形になりますし…。僕もこう見えて多忙な身なのでいつ予定が入るかわからなくて…、自宅に来ていただく日なら完全に予定が空いてる日だと思うんです。どうですか?」

「えっ、あっ、う、と…」

私が答えに詰まっていると肩に突然の重み。
え、と振り返る間もなく発せられた言葉。

「いいですよー!安室さん是非乃亜をお家に招いて上げてください!」

「あ、あず、梓ちゃん!?」

「そうですか!では今度の日曜日はどうでしょうか?」

「乃亜なら基本ポアロのバイトがない日は引きこもってるので大丈夫です!」

「じゃあ今度の日曜日10時にポアロの前で待ち合わせってことで」

「了解でーす!それでいいよね、乃亜!」

「えっ、あ、ちょっと!?」

「あ、これは大丈夫っていう肯定なので大丈夫ですよー!」

「じゃ、決まりですね。僕、他のお客様に持ってこられるよう言われた品があるのでそれ持っていきますね」

「え、あ、ちょっ、あむ、安室さん!」

私の叫び声虚しく去っていく安室さん。
そして勝手に決められてしまった日曜日の予定。

「……乃亜ちゃん、どんまい」

なんていうコナンくんの声が遠くに聞こえた。