私、男性恐怖症です | ナノ

お好み焼きにお肉は大事




安室さんを普通の態度で接すると宣言して丸一日。
時は残酷にすぎ朝が来て夕が来て。

私の丸一日休みは明日から安室さんにどうやって接しようかで迷っていた。

普通に梓ちゃんみたいに接するのは無理があるしコナンくんみたいになんて論外だ。
オーナーや小五郎さんみたいに接するとか…?

それだ!と思いたった私は問題が晴れてスッキリしたので夕食を作ろうと思いベットから起き上がった。

実はずっとベットの上で考えていてご飯もとっていなかったのでお腹ペコペコだ。
今日は大好物のお好み焼きにしよう!と思い冷蔵庫から卵、天かす、ネギ、キャベツ、豚コマ…、豚コマ?豚コマがないいいい!!!

棚に置いてある小麦粉を取ってみるも量は少ない。
これはどっちみち買い出しに行かないと作れないパターンだ。

豚コマ…なんでないんだ……。
ああ、私の豚コマ……。


しくしく泣きながら私は豚コマを買いに部屋着から着替え近所のスーパーに向かった。




*







普通、お好み焼きには豚バラだろう。
だが私は生地の上に引いて肉を焼いた後壊滅的に豚バラを切るのが下手くそなのだ。
あの肉の部分がどうしても切れない。

それに豚バラは高い。
豚コマの方が全体にお肉の味があり味わえるし100g単位で見たら安い。

それで私のお好み焼きの肉は豚コマなのだ。

豚コマを買うために車を走らせること15分。
近場のスーパーに着いた。

駐車場に車を止めエコバックを持ち私は豚コマと小麦粉を求めスーパーに足を入れた。


(豚コマ…豚コマ……)

精肉コーナーに行き豚コマを見定める。
今日は100g98円とまぁまぁ安い方だ。
…嘘をついた、高い。

もっと先にある業務用のスーパーなら品質は劣るものの100gの値段も安くお得でいっぱい入ってある。

うーん、業務用のスーパーに行って肉を買うかそれともここで買うか…。
私はお財布の中身を1人考えながらお肉を見定める。

よし、決めた。
今日は少し贅沢をしよう。

元々バイト代は基本的なこと以外には使わず前々からバイトしてあったのもあり結構な額が溜まっている。
……たまには、贅沢してもいいよね…?
いいよ!と誰かが言ったのを聞いた私はちょうどg数のいいお肉を取ろうとして誰かと手が重なった。

「あ、すいませ…」

「いえ、こちらこそすいませ…」

その後お互いの名前を呼んだのも無理はない。
手が重なった相手は私が一日中頭を抱えて悩ませていた安室さんだったからだ。



結局お肉はいいです、いいですよ、の押し問答の末私が買うことになってしまった…。

「あの、本当にすいません、お肉譲ってもらっちゃって…」

「いいですよ、僕も買おうとした訳ではなく気になったので手を伸ばしただけなので」

「ならいいんですが…」

と、会話が途切れてしまった。
いつもの私ならここでさよならをするところだが安室さんと普通に接すると決めたばかりだ。

グッと耐え私は話題を提供した。

「安室さんは何を買いに来たんです?」

「僕は小麦粉を。今日、ここが安いとチラシで入っていたので…」

「そうだったんですね…新聞お金かかるので取ってないので知りませんでした……」

「でもここのお店、チラシ掲載してるアプリありますよ?」

「え、そうなんですか?」

このアプリですよ、と教えてもらい私は早速インストールした。

「あ、本当だ小麦粉税込78円…安い」

「ですよね。なので家からは遠いですけどここに来てしまいました」

「確かに他の店と比べると安いですね…」

お互いに物が入った籠を持ちながら小麦粉コーナーへと向かう。

そして着いた小麦粉コーナー。
そこは戦場だった。

主婦独特のあれだ。
もうどう表現したらいいかわからない。
例えるならバーゲンセールに集う主婦の場所だった。

(あ、あそこから小麦粉を取るなんて…無理がある)


「あ、安室さんあそこは流石に無理があるかと…」

「いえ、僕にお任せ下さい。乃亜さんも小麦粉欲しいんですよね?何個ですか?」

「あの、安いので2つぐらい…ってまさか行く気ですか!?死んじゃいますよ!?」

「大丈夫ですよ。籠をお願いします」

と言い、安室さんは戦場へと言った。

あら不思議。
戦場にいた主婦達が、あら、いい男…と顔を真っ赤に染めて道を開けていく。

(あ、安室パワー恐るべし…)


「はい、乃亜さん。小麦粉2つです」

「あ、ありがとうございます…」

未だにポっと顔を染め安室さんを見る奥様方。

(こ、これは視線が痛い…)

それにヒソヒソと彼女?奥さん?と話してるのが聞こえる。
恥ずかしいし気まずいしどうにかなりそうだ。

「あ、安室さん用事が終わりましたし早く行きましょ」

「そうですね」

安室さんは反論もせず私についてきてくれた。

そしてお互いに買い物を終わらすと駐車場で別れた。


「では、乃亜さんまた明日」

「…はい、また明日」

明日、なんて在り来りな言葉なのに何故か心が暖かくなった。