私、男性恐怖症です | ナノ

第一歩



シャロンさんとの女子会が終わり戻ってきたポアロでのバイトの日々。
相も変わらず私は安室さんにビクビクしていた。

というか安室さんの私を見る目が変わったというか…何かに怒っている感じだ。

(そんな怖い顔私に向けないでよ…心臓でちゃう)

そんなこと言える勇気もなく私は安室さんを避ける日々を送りそして事件が起きた。

















*


安室透はイラついていた。
愛しの乃亜さんは避けるしコナンくんが来る度にふにゃり、と頬を緩ませて笑いベタベタに甘やかしている。

「コナンくん今日も可愛いねぇ本当に可愛い撫でくりまわしたい」

「乃亜おねーちゃんもう撫でくりまわしてるよ…やめてよぉ」

「ふふふ…可愛いなぁ」

「もうやめてよぉ(安室さんの目やべぇ…据わってやがる)」


(コナンくんが羨ましい…僕も乃亜さんとただ対等に…いやーーー、)

ただ、対等になんだろうか。
対等にーーー。


その時だった、聞き覚えのある乾いた音がしたのは。

ーーーバンッ。

発信源は1人の黒のスーツの男。
上に拳銃を向け放ったのだ。

そして隣にもう1人、ナイフを持った黒スーツの男。

幸いお客はコナンくん1人だった。
コナンくんも事態を把握したのか顔を強ばらせた。

乃亜さんはというと突然の事に唖然としている。

「ここの有り金をよこしな!」

「……っ」

男の言葉でやっと事態を把握したのか乃亜さんの顔が青ざめる。

「おい、早くしねーか!」

「…それは出来ない相談ですね」

僕が答えると男達は焦っていたのかさっさとしろ!と急かしてくる。
そしてカウンターの外でコナンくんを愛でていた乃亜さんの腕をナイフを持った男が引っ張り腕に首を回し乃亜さんの首にナイフを当てた。


「…………っ、ぁ」

乃亜さんは首元にあるナイフに完全に萎縮してか細い声を出していた。

「5分だ!5分待ってやる。それまでに金を詰め込まないのならこの女は殺す!」

僕とコナンくんの間に緊張が走る。


「せいぜいそこで2人金の準備をするんだな!」

「……」

乃亜さんはナイフが首元にあるのが怖いのか何も言わなかった。


そして僕達に与えられた時間は5分。
コナンくんと顔を見合わせる。

コナンくんはもう椅子から立っており戦闘準備万端だ。
なら、僕達のやることは決まった。

お互いを見つめ、頷く。

そこからは一瞬だった。

コナンくんが拳銃の男にサッカーボールで顔面を当て気絶させそれをみたナイフを持った男が一瞬の隙を見せた瞬間を逃さなかった。
僕は一瞬で間に入り男の顔面を殴り気絶させた。

乃亜さんは何が起きたのがわからないと顔をしている。
そしてすぐにパトカーのサイレンの音が近づいてきた。












*


どうやら男達は現在逃走中の空き巣犯だったらしい。
空き巣に入ろうとしているところを警察に見つかりここに逃げてきたという訳だ。


「乃亜姉ちゃん大丈夫?」

「乃亜さん、大丈夫ですか?」

警察に捕まり連れ去られていく男達を呆然と見つめる乃亜さんに僕とコナンくんは声をかけた。

乃亜さんはビクッと肩を揺らすとこちらを向いた。

ーーーーその顔は今にも泣きそうだった。

「2人共凄かったね…一瞬で私、びっくりしちゃったよ」

乃亜さんは明るい声を出し無理矢理作り笑顔を作っている。

「乃亜おねえちーー「コナンくん」

その様子を見たコナンくんが声をかけようとしたのを僕は止めた。
そして僕は乃亜さんを抱きしめた。

「乃亜さん」

「……」

いつもなら慌てふためく乃亜さんなのに今は無反応だ。
それでも構わずに僕は言葉を紡いだ。

「乃亜さん、泣きたい時は泣いていいんですよ。いきなりナイフを首に突きつけられ命の危険に晒されたんです。普通なら動揺して泣き喚く人もいると思います。……乃亜さん、どうか無理矢理笑わないで」

「……っ、…ぅ、ぁ」

僕の言葉に乃亜さんは静かに僕を抱きしめ僕の肩で泣いた。

















*



そして泣き止んだ乃亜さんは僕に抱きしめられ尚且つ自分も抱き返してると気づき物凄いスピードで後ずさって行った。


「ごごごごごご……ごめんなさいすいません本当にすいませんいやもうほんとすいません」

そこからは乃亜さんの早口の謝り、土下座までしようとして僕は慌てて止めた。

「乃亜さん、そんな僕は本当に気にしてないのでお気になさらず」

「いいいいい、いやほんとでも…もうほんとなんでもします……!…………あ、出来る範囲で!」

「……なら乃亜さん、一つお願い事をいいですか?」

「は、はいなんでしょうか…」

「僕に直ぐに慣れろとは言いませんが…なるべく普通の態度で話してもらえることは可能でしょうか…?」

「…それは、」

一旦言葉を切り俯く乃亜さん。
でも意を決したように顔をあげた。

「直ぐにとは行きませんが…なるべく早く慣れるように、普通に喋れるようにします」



ーーーーああ、僕はただ乃亜さんと対等に普通に話したかったんだ。