拉致監禁されてから何日立っただろうか。
家族は心配してる?友達は?捜索願いは出た?そんなこくだらないことを考える毎日。

足には足枷、手には手錠。

どこかのワンルームの部屋見たいでお風呂トイレ付き、時計もなくカレンダーもない。
今がいつで何時なんかも分からない。

カーテンも黒、真っ暗、闇である。


試しに窓がないか確認してみたがなかった。

足枷も手錠もお風呂やトイレ入れるぐらいの長さはある。

(私はなんで拉致監禁されてるんだろうか)















*



それは数日前のことだった。
たまたま仕事が残業になり私は駅まで走っていた。

そう、走っていたのだ。

そこからの記憶がなく気がついたるこの部屋にいた。

記憶が無い部分から考えるに私は今拉致監禁した相手に攫われ薬でも嗅がされたのだろう。
全て記憶が無いから憶測でしかないが。





そんなことをぼんやりと考えていたら扉の開閉音が聞こえた。

意味もなく下に向けていた視線を目の前の男に合わせる。
目線をあわせなくてはぐちゃぐちゃにそれはもうドロドロに抱かれる。
合わせても抱かれることに変わりはないが。

だけど男―透、と名乗った男は私を抱かずにドロドロに甘やかす時がある。

どうやら今日はドロドロに甘やかされるみたいだ。

こう見えて前の職業柄作り笑顔と本物笑顔の区別はつくのだ。
本物の笑顔の時は私をドロドロに甘やかす時だ。


「ああ、愛しかったですよ。君を想うだけでめんどくさい仕事も何もかも頑張れました。ああ、愛しい愛しい、」

そう言って私の名前を言う。

「そう…頑張ったね」

私は思っていないことを言葉に出す。
そうでもしなくちゃドロドロに抱かれるからだ。
機嫌がいい時はそれに合わせる、それが私の透と過ごしてきてわかった日常だ。

いい子とばかりに頭を撫でられる。

「ああ、本当に愛おしい。そのは綺麗な白い肌、赤い唇、微かにピンクな頬。サラサラの黒い長い髪の毛。ああ、何をとっても愛おしいで僕だけの僕だけの天使、女神、ああ、本当に愛おしい。仕事なんてしたくない。ずっと君といたい。でも仕事をしなくては君を養えない。仕事をしなくてもお金が入らなければいいと思いませんか?ああ、君もそう思いますよね。僕と居る時間が減ってしまいますからね。やっぱり僕と君はずっと一緒にいないと。相思相愛ですからね。ああ、愛おしい愛してる愛してます愛してます愛してます愛してます、ああ愛しの、」

うっとりとそれはもうこれ以上愛してるものは無いという目で見てそれはもう愛おしそうに抱きしめる。
そして名前を言われる。

「……おや?まだお風呂に入ってないんですか?一緒に入りましょう」

透は笑う。
いつも私の前では笑顔だ。

作り笑顔の時も本物の笑顔の時も。
だから私も笑うのだ。

「うん…一緒に入ろう透」

これが作り笑顔か本物の笑顔かなんてわからない。