「ボーロが無いならクリスマスじゃない」



冷たくそう言い放ったのは我らが作法委員長、立花仙蔵だった。

南蛮の方で行われてるお祭り?のクリスマスを俺たちもやってみよう!って誘ってみたらこんな結果だよこんちくしょう!




「仙ちゃんクリスマスのことよく知らないくせに!」
「長次に聞いた。ボーロとご馳走で神様の誕生日を祝うんだろう?」

隣で長次が頷く。
それを見て仙ちゃんはにやりと笑った。
くそ!何で俺は仙ちゃんに勝てないんだ!
悔しがってる俺を見て仙ちゃんはまた嬉しそうに笑う。

「仙ちゃんはクリスマスやりたくないの?」
「そうは言っていない。ただ、ボーロが無ければやらないと言っているだけだ」


そんな無茶苦茶な!
あ、駄目だ心折れそう。
優しく長次が頭を撫でて慰めてくれる。泣いていいですか?


「長次、お前の胸を貸しておくれ…」

静かに首を横に振られた。
折れた。俺の心は完璧に折れた。

もう良いです。俺は、は組に行ってきます。
留と伊作なら喜んで一緒にやってくれるだろうしね!
最初に仙ちゃんを誘った俺が馬鹿でしたよ!




「まあ待て」
「もういいよ。仙ちゃんに天パの気持ちはわからないよ」
「確かにわからないがな。なあ男主名前」
「何だよサラスト!」




「お前が作れば良いじゃないか」





何を、とは言えなかった。
仙ちゃんがすっごい楽しそうに笑ってるんだもん。
いやほらね、嫌な予感しかしないけど。
でも俺、仙ちゃんのこと好きなんだもん。仙ちゃんが喜んでくれるんなら頑張るよ!








「…頑張ったのは、よく分かった」



長次に本を借りて、食堂のおばちゃんに台所を借りて俺は早速ボーロ作りを始めた。
俺が作ってる様子を隣で仙ちゃんが見ていて、そのことに浮かれた俺は鼻歌を歌いながら作っていた。
あ、結構簡単…なんだ、俺って料理の才能あるんじゃん!
そして完成したものをじゃーん、と仙ちゃんに見せたら、ため息混じりに先程の言葉をもらったのだ。


「うん、俺頑張ったよ!」
「ああ。せっかく男主名前が一生懸命作ったんだ。男主名前が食ってみろ」
「え、でも仙ちゃん食べたいんでしょ?」
「お前は一人でそれを食うつもりか」



あ、そっか!
じゃあいただきます、と一口食べてみた。
味はもちろん…




「まっず!!」


「だろうな」
「何それ!」
「まずくなるのは一目瞭然だった」


うわ、料理の才能あるとか言ったちょっと前の俺ふざけんな。
一度だけボーロを食べたことがあったけど、それとは掛け離れすぎている。月とすっぽん。

こんなんじゃ仙ちゃんにあげられないや。
クリスマスも無しだな!

あーあ、残念。
半ベソかきながら俺は片付けを始めた。夕飯までには綺麗にしておかなきゃ。
うう、俺格好悪い…。



「仙ちゃん、それ捨てるから寄越して…って、仙ちゃん!?」
「勿体ないだろう。食べてやる」
「まずいからやめよう!仙ちゃんお腹壊すからやめなさい!」
「せっかくお前が作ったんだ。食べないわけにはいかないだろう」


そう言って仙ちゃんは、くそまずいボーロを口に運ぶ。
一口食べて、嫌な顔をして、そこでやめれば良いのにまた一口…


「仙ちゃん、もういいよ…」
「いや、全部食べる」
「クリスマスやりたいなんてもう言わないからさ…」
「まずくなるのは知っていたから覚悟はできていた」


あの、それどういうこと。
なんだかんだ言ってるうちにボーロは無くなってしまった。
全部、仙ちゃんは食べてくれた。








「男主名前が作ったものなんだ、私が全部食べなければ気が済まない」




ケーキが無ければ作ればいいじゃない


(仙ちゃ…大好きっ!)
(なあお前ら、話の内容がなんか卑猥)
(どこが?)
(伊作、仙蔵に薬用意してやれ)




2009.12.17

※ボーロ=ケーキ


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