転んだら危ないと思って支えていただけ
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誰かどうにかしてくんないかな、この状態。
「なぁ、御幸ィ」
「俺先輩ね」
「・・・御幸センパイ」
「ん?どうしたんだ?」
”どうしたんだ?”じゃねぇよ!この人はおかしいと思わないのか?
「・・・聞きたい事があるんだけど」
「んー?」
「あのー・・・」
「なんだよ?ハッキリしねぇなぁ。」
「なんで・・・」
「なんで?」
あぁっ!もう!なんでいちいちそんな甘い声出すんだよ!しかもそんなところから!
「早くしないと練習はじまるぞ?」
それをお前がいうか。
でも御幸のいう事ももっともなので、俺はさっきからずっと気になっている事を聞くことにした。
「・・・なんで俺、今日もアンタに抱きつかれているんでしょうかねぇ?」
*****
この頃御幸はやたらと俺に抱きついてくる。
それもところかまわず、だ。
普段はバカな事しか言わない御幸も野球に関しては真面目に取り組んでいて、部活中はベタベタしてくる事はなかった。
なのにここ2,3日、練習開始前や休憩時間になると、おんぶおばけに豹変するのだ。
今日も俺がグラウンドに足を入れた瞬間、後ろから”さっわむら〜”とか言いながらガシッと後ろから抱きつかれたのだ。
もちろん誰かに助けてもらおうとはした。
でも俺の見えないところで何かがあったみたいで、気の毒そうにかわいいそうな子を見る目で見てはくれるけど、誰も助けてくれないのだ。
そんな目で見るくらいなら助けてくれよ!
御幸に抱きつく理由を聞いてもあやふやで適当な事しかいわねぇ。
最初は”寒いからカイロ代わり”おとといは”疲れたからおぶって”昨日は”体調チェック”だったな。
しかもそれを耳元で少し低めの甘い声でささやくように言うもんだからたまんない。
俺はそれに弱いんだっつの!
さて、今日はどんなもっともらしいアホな理由をつけてくるんだろうな。
*****
「んー?危ないから?」
「・・・危ないって何がだよ?」
「転んだら危ないだろ?」
「・・・はぁ?」
「お前の事だから転ぶときは派手に転ぶだろ?だから転んだら危ないと思って支えていただけ」
あきれて何もいえねぇ。ほんと何言い出すんだ、この人。
しかも耳元で無駄に甘ったるく。
「転ばねぇし!」
「わかんねぇぞ?この世は危険でいっぱいなんだ。用心に越したことはねぇだろ?」
「この体勢の方が危ねぇだろ!?つか歩きにくい!放せよ!」
「えー」
「えー、じゃねぇ!は・な・せぇ〜〜〜〜!」
御幸の腕から逃れるために必死でもがくけど、はっはっはっと笑いながらもさらに力を入れた腕からは逃れられない。
男としては少し悲しいことなんだけど、力ではやっぱりまだ敵わない。悔しいけど。
ほんっとに腹たつことに俺が必死にもがいている間も御幸は余裕綽々で、
今も俺の頭や首筋の匂いを”あー、甘くていい匂いー”といいながら嗅いでいる。
さっきから俺の腰というかケツにやたらとグイグイ押し付けてるのはセーフティーカップなんだよな?信じていいんだよな?
あ〜〜ダメだやばい鳥肌たってきた。
そろそろ、そろそろキレていいよな?俺、結構ガマンしたよな?
相手は先輩だけど殴っても許してもらえるよな?
よし、殴るぞ!力加減できなかったらごめん!でも御幸が悪いんだからな!
と、その時だった。
耳にぬめりと湿った感触が。
こ、これは・・・。
ヤベェ、力抜ける。腰も抜ける。
「・・・てってめっ!」
「だから俺先輩な。で、どうした?」
「みっみみ!耳、舐めやがったな!?」
「うん、舐めた」
こっのっやっろぉーー!俺が耳弱いって知ってるクセに〜〜〜!
ほんっとなんつー男なんだ!
殴ってやりたいけど、体に力が入らねぇ。くそっ。
「・・・で?」
「・・・で?ってなんだよ?」
「手、離した方がいい?」
後ろを振り返ると、腰が抜けて立っていられない俺を後ろから抱きしめながらニヤニヤと意地悪く笑う御幸。
くっそぉ〜〜〜〜!わかってるクセにわかってるクセにわかってるクセにぃ〜〜〜!
今御幸に手を離されたら、腰砕けになっている俺は立っていられない。
くやしい!くやしい!あぁ、ムカつく!
「・・・離さないでクダサイ」
「了解」
見なくてもわかる。
今の御幸の顔は最上級にご機嫌な笑顔だろう。
その笑顔を想像しただけで、2,3回はぶん殴ってやらないと気がすまないくらい、腹が立つ。
・・・あぁ、なんで俺はこんな変態くさい意地悪なヤツの事が好きなんだろうな。
力の入らない体を上機嫌な御幸に預けながら、過去に戻れるならぶん殴ってでも目を覚まさせてやるのに、と過去の自分を恨んでいた。
でも過去には戻れないので、かわりに御幸を殴ってやろう、うん。
後で絶対殴ってやるからな!
覚えてろ御幸!!
2010.03.14
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御幸オールシーズン様へ。
ギリギリだったにも関わらず変態要素少なめという・・・。
ほんとごめんなさい。
でも楽しかったです!
お誘いありがとうございました!
*かつお*