07/28 ( 22:05 )
類は友を呼ぶ(コラボ)

たまご氏宅の嶺ちゃん夢主さん時乃ちゃんと、優衣が仲良くなるお話。
寿弁当には散々悩まされております(設定的な意味で)





「はぁ、あれは酷い。酷すぎる」

散々、文句を吐きだしながら、瑞歩と共にやってきたのは食堂だった。
今日は短縮授業で昼までなのだが、せっかくだからとお昼ごはんを食べて帰ろうということになった。
弁当を持参して、教室でゆっくり喋りながら、と、それはよかったのだが……。

「まあまあ、お金入ってただけマシだって」
「そうだけど、にしたってあれはおかしいでしょ。あんな、あんなっ……!」

やり場のない怒りに、本日何度目かの溜息を大きく漏らす。
今日の家族の弁当作りは母が担当していた。
家を出る頃にはいつも通り、可愛い巾着に入った弁当箱が机の上に置いてあったので、何の疑いもせず、そのまま鞄の中に入れてきたのだが。
待ちに待ったお昼休み、弁当箱を開けてみると、優衣の笑みは凍りついた。
おかずも白ご飯も、入っていない。
入っていたのは、手紙と500円玉が一枚。
手紙の内容は、

『ごめん、寝坊してごはん作れなかったわ。500円あげるから適当になんか食べといて。 母より』

思わず、絶句した。

「おのれええええ!!」

次の瞬間、優衣の怒りに満ちた叫び声が教室内に響き渡ったのであった。

「でもさ、あれはもうネタだよね」
「こっちはいい迷惑だよ、まったく」

宥めつつ完全に面白がっている親友が、憎らしい。
絶対に帰ったら母に苦情をぶつけてやろうと、心に誓った。
とりあえず、瑞歩には席を確保してもらいつつ待ってもらい、優衣は売場の方へ。
短縮授業とはいえ、生徒は結構残っているもので、そこそこ賑わっていた。
弁当が並んでいるカウンターで、メニューを見ながらどれにしようかと悩んでいると、

「あら?」

不意に、目の前で声がした。
顔を上げると、よくここで弁当を売っているお姉さんがそこにいた。
お姉さんといっても、それほど歳が離れているようにも見えない、大学生ぐらいの女性だった。
柔らかく温かい雰囲気で、実は見る度にこっそり癒されていたのはここだけの話。

「あ……こんにちは」
「こんにちは。今日はお友達と一緒じゃないの?」
「あ、今日はちょっと特別であたしだけ買いに来たんです。友達はお弁当持ってるから」
「そっか。今日は何にする?」
「うーん……特製唐揚げ弁当で!」

いつもこの学校に来ている寿弁当の売りは、なんといっても唐揚げである。
週に一度はこれを頼んでしまうくらいには、ハマっていた。
会計を済まそうと、鞄の中から財布を取り出した時、ひらりと何かが紛れてカウンターに落ちた。

「ん?」
「あら……あ、これってもしかして、彼」
「うわああごめんなさい!」

お姉さんが皆まで言う前に、慌ててそれを拾い上げて、表面を隠すようにして持った。
手帳のカバーの間に挟んでいたつもりの、トキヤと一緒に写ったもので、恥より何より、見られてはいけないという恐怖と焦りに駆られていた。

「おっかしいな、お手帳に挟んでおいたはずなのに……」

急いで手帳にしっかりと挟み直し、財布から代金を取り出す。
周りに彼女以外の人間がいなかったことが救いだが、それでも冷や汗と、動悸で何だか心地が悪かった。

「……ねぇ、優衣ちゃん、だったよね?」
「へっ?」

急に名前を呼ばれて、どきりとした。
何故、名前を知られているのか。
実は彼女はエスパーなんじゃないか、なんてとんでもないことを考えていると、クスリと笑われてしまった。

「お友達が呼んでるの、聞いてたから。私、逢川時乃っていいます。よかったら、優衣ちゃんといろいろお話してみたいなって思ってるんだけど……」

とても優しい笑顔を向けられて、断る気なんて当然なくて。
ひとまず彼女は勤務中なので、手短に電話番号だけ伝えておいた。
ひょっとしたら、写真を完全に見られてしまったのかもしれないということは、何となくだが感じていた。
だけど、彼女なら……根拠はないけれど、大丈夫だと思った。

「じゃあ、また後で連絡するね」
「はい、お願いします!」

新しいお友達ができた。
純粋に嬉しくて、唐揚げ弁当を片手に瑞歩に自慢したのはその直後の話である。




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