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複雑な乙女心と狼心(再録)

もち子氏宅銀魂夢主さん梓ちゃんと、優衣でこらぼりんぐ……という程でもない。
もち子ちゃんが書いてくれた話の続きです。
梓ちゃんの一言で振り回される二人が楽しかった。


屯所に帰ってから、あたしは土方さんを見る度に意識するようになってしまった。
土方さんとお風呂……土方さんと……お風呂……そ、そんなのどう考えても無理に決まってる!
大体、梓さんは誤解してるんだ。
あたしと土方さんはそういう関係じゃないし、土方さんはあたしのこと、きっとそんな風に見てないよ。
そりゃあ、梓さんみたいに女性らしい体付きだったら、土方さんも得したかもしれない。
あたしなんて月と鼈、もちろん鼈の方だよ!
梓さんは何を考えてあんなこと言ったんだろう。
あぁ、きっとあたしが恥ずかしがるのを見て面白がって、からかってたんだ。
……何だか虚しくなってきた。
それにしてもすごいな、梓さんって。
あんなことを平然と言ってしまえるなんて、さすが経験豊富な女性は違う。
男の人とお風呂……土方さんと、お風呂……ああ、駄目だ。
考えただけで恥ずかしくて、顔が燃えるように熱い。

「……俺、お前に何かしたか?」

突然、土方さんの怪訝な顔がすぐ目の前にあって、一瞬だけ、たぶん心臓が止まった。

「ひえああああっ!? な、何にもないですよ! な、な、なんでそんなことっ」
「いや、動揺しすぎだろ。それで何もないっつっても全然説得力ねーからな」
「うぅ……」

び、びっくりして変な声出しちゃった……恥ずかしい。
おかげで脈もかなり速くなった。
何より、土方さんに疑われてしまったことへの緊張が、土方さんの真っすぐな眼差しがあたしを追い詰めてくる。
こうなってしまっては、もう誤魔化すことなんてできません。

「じ、実はですね……」

こんなこと、口に出したくなかったのに。
少しだけ、事の発端である梓さんを恨んでしまった。



優衣の屯所に帰ってからの様子は、明らかにおかしかった。
俺を見た途端に顔を真っ赤にして、すぐに気まずく泳いだ目を逸らしやがる。
……確か前にもそんなことあったな。
こういう時、大抵はよからぬことが発覚するモンだ。
例の花見の後の悲劇は忘れねェ。
俺に言い寄ってくるような奴の女心はそれなりに理解してきたつもりだが、アイツの心は未知の領域だ。
だから夜、部屋に呼んでそれとなく様子を観察した後、思い切って聞いてみた。
優衣の動揺っぷりは異常だった。
だがそれ以上に、優衣から聞いた話はもっと異常だった。
思わず湯呑みを握る手に力が入って、粉砕させちまうくらいには。
おかげで手が茶まみれだ。

「あ、あの……やっぱり今の話は忘れてくださいっ!!」
「オイ、ちょっ、待て!」

あまりの衝撃に固まってたら、素早く逃げられちまった。
逃げ足は意外と速いな、アイツ。
それにしても……あの女、次会ったら覚えてろよ。

『あの、あの、さっき梓さんに、一緒にお風呂入ろうって誘ったら土方さんが喜ぶって言われて……あの、その、なんか土方さん見たらその話思い出しちゃって、恥ずかしくてっ』

そう語る時のアイツの顔は、沸騰しそうなくらい赤かった。
たぶん、俺の顔も……いや、何でもねェ。

「ったく、できるわきゃねーだろ……」

アイツがいないのをいいことに、吐き出すようにぼやいた。
ンなことしてみろ、取り返しのつかねーことになっちまうだろーがよ。
そんな複雑な思いは胸の内に締まっておいた。





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