11/23 ( 00:27 )
秘密の大戦争(再録)

土方さんがちょっと危ない橋を渡りそうになりました。



大量の書類整理という気の遠くなるような仕事がようやく一通り片付き、ほっと一息を着く今。
ちょうどいい時間なので、優衣が暇なら団子屋にでも連れて行ってやろうと思い立ち、少女の姿を探しているのだが、どこにも見当たらない。

「優衣ちゃんなら、さっきまでそこで洗濯物を干していたんだが。部屋に戻って休憩でもしてるんじゃないか?」

たまたま鉢合わせた近藤からそんな話を聞いて、優衣の部屋に出向いた。
ちなみにその間、沖田が例のごとくサボりを決め込んでいたので、怒鳴ってきた。

「優衣ー、いるかァ?」

しかし返事はなかった。
が、彼女の影らしきものは確かに存在している。
不審に思った土方は、そっと戸に手をかけ。

「開けんぞー」

どこか緊張感を覚えながら、ゆっくりと引いた。
戸が、滑らかに滑る。
明かりは点いておらず、外から注ぐ日に照らされているだけで、部屋の中は薄暗い。
少し中を見渡したところで、すぐに気が付いた。
壁に背を預け、座ったまま眠る優衣の姿。
勝手に少女の部屋に踏み入れるのはさすがに躊躇いがあったが、土方は優衣に近付いた。
顔をやや上向け、健やかに寝息を立てて、目を閉じるその姿は無防備だった。
愛おしささえ込み上げてくるのは、やはり惚れてしまっている証拠か。
まじまじと見下ろしながら、そんなことを考えていると、だんだん醜い男の欲が膨らんでいく。
この隙に、触れたい、だなんて。

「いや、俺が犯罪者になってどーすんだ」

すぐに考えを改め、己を戒めた。
汚れを知らなさそうな純粋そのものの少女を、自分の欲で染めてしまおうなんて、罪深いにも程がある。
しかし、そんな理性とは裏腹に、視線は色づきの良い彼女の唇に。
本能と理性の激しい葛藤が、繰り広げられる。

「……頭撫でるくらいならいいよな」

本能が、少々勝ってしまった。
土方はその場で跪き、起こさないように細心の注意を払って優衣の頭に触れた。
柔らかい髪の感触と彼女自身の温もりが、手のひらに伝わる。
愛おしさが胸に膨らんでいく。
これくらい、いつもしているのだから咎められることではない。
しかし愛おしさと比例して欲も増し、自然と手が下りていってしまう。
ぷに、と肉付きの良い頬に触れ、その快感に引き込まれる。
しかしそれだけではやはり満たされず、触り心地の好い頬を撫でながら親指で唇に触れる。
その感触が指に伝わった瞬間、はっと我に返った。

「何やってんだ、俺ァ」

自身に言い聞かせるように自嘲し、ぼやく。
危うく、このまま過ちを犯してしまうところだった。
大体、こんなところを誰かに見つかってしまったら、大問題だ。
揃いも揃って警察のツートップが、ストーカーだったり眠っている少女に手を出そうとしているなんて。
団子屋は諦めて、このまま寝かせておいてやろう。
土方は自室に戻って頭を冷やすことにした。



「ん……」

土方が部屋を去ってから、優衣はそっと目を開けながら指を唇に触れた。
先程の指の感触が、まだ残っている。
浅い意識の中で、頭も、頬も、触られた時はとても心地好くて安心した。
だけど、唇は……ドキリと心臓が強く跳ねて、顔に熱が点った。
バレなかったのが奇跡である。

「なんで、あんなこと……」

先程から戸惑いが胸を支配している。
嗚呼、また土方をまともに見れなくなりそうだった。



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