11/23 ( 00:21 )
夢でしかお前に会えない(再録)

優衣が元の世界に戻っている間のお話。
呟きさんの診断でこのお題が出てきて、ピンと来たので書いてみました。




穏やかな朝の陽射しを浴びて、目を覚ます。
ゆっくり瞼を開けて、ぼやけた視界がくっきりとしてきた頃、土方は目を見開いて息を呑んだ。
陽射しのように柔らかな笑みを浮かべ、顔を覗き込む少女が映ったのだ。

「土方さん、おはようございます!」
「……何でだよ」

体を起こし、優衣の顔をまじまじと見つめる。
声が、微かに震えた。
だって、彼女は数日前――

「お前、確かに俺たちの前から消えて」
「何言ってるんですか? あたしが土方さんの前からいなくなるなんて、あるわけないじゃないですか」

滑稽だと言わんばかりに笑い飛ばす優衣。
これは、夢か幻か。
それとも数日前のあの出来事が、悪い夢だったのかもしれない。
きっとそうだ――確かめるべく彼女に手を伸ばす。

「優衣……」

もうすぐ、もうすぐ触れられる。
愛おしい彼女をこの手に抱いて、存在を実感したい。
優衣はここにいるのだと、安心したい。



しかし、気付けば伸ばした手は宙を彷徨っていた。
起こしていたはずの体が布団に沈んでいて、辺りはまだ薄暗くて。
今の今まで視ていたものが、夢だったのだと思い知った。
力なく、腕を下ろす。
胸に残るのは、虚しさと、ほんのりとした痛み。
彼女の幸せを祈って送り出したはずなのに、この未練は一体何なのだろう。
情けないと自嘲しつつ、再び目を閉じた。

……また、会えるはずのない少女に会えることを期待して。



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