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君の傷を癒したい(再録)

前のサイトで全力少女を読んでくださっていた方なら知っている、子猫のミーちゃんに関する?お話。
跡部さんが良い人です。

優衣が可愛がっていたというあの子猫が死んだ日の、翌日。
奴は何事もなかったかのように、振る舞っていた。
見たところ、無理をして気丈に振る舞っているというわけでもなさそうだった。
たとえそうであれば、奴の態度ですぐにわかるからな。
だから、もう立ち直ったのだと思い込んでいた。


「あ、猫ちゃんだ!」

校内に入ってきたのは、奴が可愛がっていた子猫と似ている猫。
優衣は性懲りもなく、嬉しそうに猫に近寄る。
そんな奴に、俺は心底呆れながら見下ろして言ってやった。

「猫ちゃんって、お前は餓鬼か」
「いいじゃん、別にー」

膨れっ面でそう言いながら、優衣は猫を抱いて撫でる。
その手つきはとても優しい。
安心しているのか、猫は気持ち良さそうに目を細めている。
出会ったばかりなのに、随分と懐いているらしい。
そして次第に、優衣の表情が曇っていった。
あの子猫を思い出したのだろう。
ここで初めて、優衣は立ち直れたわけではないのだと、俺は知ってしまった。

「……行くぞ」
「え、あ、ちょっと! ごめんね、またね、猫ちゃん」

素っ気なく言って先を行くと、背後から慌てた声が響いた。
そして優衣は名残惜しげに猫に話しかけ、俺の後を追ってきた。
忙しない足音だ。
振り返ると、猫と別れた優衣が俺の腕を掴んだ。

「もう、置いていかないでよ」

そう口にした優衣は、少し泣きだしそうな顔で。
嗚呼、俺が守ってやらねぇとな。
俺はふっと笑みを零すと、優衣の頭を撫でてやった。

「別に置いて行きやしねーよ。俺達はずっと一緒だ」

すると、優衣はきょとんと目を瞬かせ。
少しだけはにかんだ。

「……うん」



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