11/22 ( 23:46 )
Please Mr.Postman!!(再録)

蔵ちゃんと優衣で、カーペンターズの有名曲パロ。
高校の合唱コンクールで歌った、思い出の曲を元にしてみました。
曲に設定を合わせたので連載とは若干異なる部分があります。
主に、携帯の有無…。



『手紙書くからね!』

別れ際、優衣ちゃんは笑いながらそう言うてくれた。
俺はその手紙を楽しみに、仲間達と一緒に大阪へと帰っていった。
それから毎日のように家の郵便受けをチェックしとる。
そら好きな女の子からの手紙やねんから、楽しみなんは当然やろ。
けど、手紙がそんな早よ来るわけないってこともわかっとる。
優衣ちゃんも忙しいやろからな。
そうやっていつ届くかもわからん手紙を、胸に期待を大きく膨らませながら待つこと一ヶ月。
未だに手紙は来ぇへん。
さすがにちょっと不安になってきたな……。
朝、俺はいつも通りに郵便受けの前に立って、配達のおっちゃんを待つ。

「おっちゃん!」
「何や、また君かいな」

おっちゃん、そないに呆れんでもええやん……。

「手紙は?」
「残念やけど、今回もないみたいやわ」

おっちゃんはちょっと申し訳なさそうにそう言うて、バイク乗って行ってしもた。
毎日会うてるおかげで、おっちゃんに顔まで覚えられてもうたわ。
いつものやり取りを今日も繰り返し、俺は落胆する。
何でや、何で来ぇへんねん!
まさか優衣ちゃんに何かあったんちゃうか?
しもた、そういや電話番号聞くん忘れとったわ……。

「クーちゃん、フラれたんとちゃう?」
「そんなわけあらへん!」

がっくり来ながら家ん中戻ったら、友香里がシャレにならんこと言いよった。
全力で否定したったけど、そない言われたら不安になってきたわ。
何でや、俺、何かしたか?
このまま手紙来ぇへんかったら、どないしたらええんや。
カブリエルを失った今、俺にはもう優衣ちゃんしかおらんねん!


そして翌日。
いつもと変わらん不毛なやり取りを繰り返した。

「せやからない言うてるやん」
「嘘や! ホンマはどっか隠してるんやろ!」
「そないなことせえへんて。俺に何のメリットもないやん。おっちゃんも忙しいねん、ちょっと退いてんか?」
「ちょ、待ってやおっちゃん!」
おっちゃんは迷惑そうに顔を顰めてから、バイクを走らせた。
遠ざかっていくおっちゃんの背中に、引き止めるべく俺はめっちゃ叫んだ。
けど、そんなことしてもおっちゃんは止まってくれへんし、手紙が届くことはない。
不安は膨らむ一方や。

頼むから早よ、誰か持って来てくれ!







「あ、しまった」

今、あたしは数学の宿題を見てもらうべく、国光君の部屋にお邪魔してる。
やっとのことで難問を終わらせ、一息吐いたところで、ある重要なことを思い出してしまった。
思わず呟いたあたしに、国光君は怪訝に眉を寄せた。

「どうした?」
「……蔵ノ介君に手紙書くって言ってたのに、忘れてた」

あの時の蔵ノ介君、すっごい嬉しそうにしてくれたから、何だか罪悪感が……。
今頃、不安がってたりして。
これはまずいことをしたと思いながら苦い顔をしていると、国光君が助言してくれた。

「電話でもすればいいんじゃないか?」

けど。

「……電話番号、聞いてない」

このとんでもない状況にうなだれてしまう。
そうすると、国光君が一言。

「今からでも遅くはない。早急に出してしまえばいいだろう」
「そっ、そうする!」


白石家に一通の手紙が届いたのは、それから二週間後だった。




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