05/11 ( 20:21 )
結局のところ君が好き

トキヤさんと優衣で背中ネタ。
ひょっとしたら優衣は背中フェチかもしれない。


一人用のベットで、ふたりでくっつき合いながらシーツに包まる。
相手の体温が全身に沁み渡り、これ以上はない程の安らぎと至福の中を過ごしていた。

「……あたしって、背中フェチなのかなぁ」

彼女が懐疑的な口ぶりでそう言い出したのは、あまりにも突然で突発だった。
心なしか、背に回された柔らかい腕の力が強まった気がする。

「人の背中にくっついてるの、すごく安心するんだよね」

少し照れくさそうにそう告白する彼女が、小さく苦笑する。
可愛らしいと思いながらも、トキヤの中で身勝手な不満が生まれた。
少し、彼女を困らせてやろうか。
そんな醜い衝動に駆られて、不機嫌を半ば装って彼女の耳にかかった髪を退け、そこへ唇を寄せた。

「私の背中ではなくても、ですか?」

他の男の背中でも、そんな風に感じるのかと――所謂、嫉妬心に支配されていたのだ。
が、優衣がぴくりと肩を震わせ、真ん丸な目を瞬かせてこちらを見上げてくるのを見て、すぐに正気に返った。

「……すみません。今のは忘れてください」

自分が一番、優衣を愛し、優衣に愛されている。
それだけの自信はある。
それなのに、優衣に少しでも他の男の手が触れれば気分が悪いし、時折、余裕さえ失ってしまう。
恋というものは予測不可能で、戸惑いを隠せないことも多々あるものだ。
それにしたって、己の勝手な我儘で優衣を振り回してしまうなんて、あってはいけないはずだった。

「トキヤくん、ちょっと後ろ向いて」
「え?」
「お願い。ねっ」

またもや唐突に懇願してくる優衣に、不思議に思いながらも言う通りにしてみる。
すると、背中に柔らかく心地好い感触。
ぎゅう、と強く抱き締められ、頬擦りされているのがわかった。

「んー、やっぱりトキヤくんの背中が一番好きかな」

まったりと微睡むような声が胸に溶け入る。
渦巻いていた、欲に塗れた感情が浄化されていくのを感じて、自然と頬が緩んだ。

「当然です」

ふっ、と。
ふたりが小さく笑ったのは、同時のことだった。



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