11/08 ( 01:01 )
最高の安眠術

呟きさんで「みんなのお子さんが好きな相手に抱き枕にされて眠っている様子をください」っていうタグが流れてきたので、ちょっと小ネタでも書いてやろうと会話文だけ書いてたらだんだん描写も入れたくなってきて、最終的にタグと若干主旨がズレました。
トキヤさんと優衣で、たぶんトキヤさんのところに初お泊まりした時ですね。






「い、一緒に寝るんですか?」

ベッドに腰をかけてこちらを見上げる彼に、あまりの衝撃に声をひっくり返しながらも、問い返した。
しかし、彼は何食わぬ顔できっぱりと頷いてみせた。

「ええ。ベッドはひとつしかありませんから」

彼の言い分は確かに正しいことではあるが、だからといって、そうすんなりと納得できるわけがなかった。

「あたし、ソファーで寝ます!」
「だめです。それでは充分に体が休まりません」

これまたばっさりと斬り捨てられ、肩を落とす。
とはいえ、恐らく受け入れられはしないだろうなとは、うっすら予感はしていた。
それでも諦めきれず、嘆かわしい眼差しで訴える。

「でもぉ……」
「君がそこまで言うのなら、私がソファーで寝ましょう」
「えっ」
「それなら問題ありませんね?」

突然、彼はとんでもない提案をしてきた。
そんなもの、許せるはずがない。
思わず顔が凍りついてしまったが、はっと我に返り、慌てて否定する。

「あ……いや……そ、それこそだめです! ここ、トキヤさんの部屋なんだし」
「しかし、一緒に寝るのは嫌なのでしょう?」
「う……嫌、なわけじゃなくて……その、どきどきしてちゃんと寝れるか不安で……うわあっ!」

ぐだぐだと言い訳している最中、強く腕を引っ張られ、態勢を崩してしまう。
倒れ込んだ体は彼によって受け止められ、共にベッドに柔らかく沈む。
たじろいでいる間に抱き締められ、すっかり身動きの一つも取ることができなくなってしまった。

「ト、トキヤさんっ」
「前にもこんなことがありましたね」
「えっ……あぁ」

初めて彼が我が家に来た時のことを思い出す。
あの頃はまだ恋人同士などという関係ではなく、小さな幸せと共に、もどかしく苦しい日々を過ごしていた。
まさかこんなことになるだなんて、あの頃の自分たちは思ってなかっただろう。

「君を抱いていると、君の体温を感じていると、安心するんです。きっと、今夜はよく眠れますね」

彼がふわりと優しく微笑む。
胸のときめきと、安心感と、温かさに包まれて、ふわふわと意識が浮き出した。
あの時もそうだった。
確かに存在する彼の体温が心地好くて、それだけで幸せで。

「トキヤさん……やっぱりあたしも、よく眠れそうかもしれません」
「それはよかったです」

一緒のシーツに包まって、抱き締めあって、安らぎの時の中を揺蕩う。
そしてゆっくりと瞼を閉じて、どうかふたりが幸せな夢の中でまた出逢えますようにと、ささやかに祈った。


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