「…何故俺がこんな目に…」


「そりゃあアレだ、連帯責任って奴だよ」


力の限り雑巾を絞った桂は悄然と肩を落としつつ、締まり無くへらへら笑う銀時を睨み据える。


さらにその肩の向こう、竹箒に凭れてぼんやりと中空を眺める少年を見つけて彼の怒りは頂点を越えた。


「元はと言えば貴様らの馬鹿騒ぎが原因だろうが!」


八つ当たりよろしく投げつけた雑巾はガコンと小気味良い音を立ててバケツに収まる。


の、筈が、それは見事に軌道を逸れて竹箒の少年、高杉の黒髪にべちゃりと命中した。


気持ち悪い程の沈黙が三人の間に広がる。


「…テメェ…ヅラぁ」


ゆらりと立ち昇った殺気に桂と、何故か銀時まで一緒になって後退った。


「待て、今のはわざとではない、俺はバケツに入れようとしたのであってだな」


「問答無用だコラァァァ!」


「「ぎゃああああああ!」」


追われれば条件反射で逃げたくなるのが人間という生き物である。


突如として始まった壮絶な鬼ごっこに終止符を打ったのは、穏やかで玲瓏な声だった。


「…こんなことだろうと思いました」


呆れたように、だけど何処か楽しげに響くその声音に、三人は動きをぴたりと止めた。


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