翻る白がただ鮮やかに焼き付いて離れなかった。


目を背けたくなるほど眩しく、それにも増してひどく苛烈なその色は、常に自分より先んじた場所にある。


いつもいつも、置いて行かれているような気がして癪だった。


「高杉ィ」


戦場に立つときとは打って変わって相変わらず覇気に乏しい表情が、唇の端をゆるく吊り上げて笑みを浮かべる。


「死ぬんじゃねーぞ」


あぁこいつは本当に、嫉ましくて羨ましいほど真っ直ぐだ。


その背中越しに見る景色が実は嫌いじゃなかったと告げたら、同じように笑ってくれるだろうか。


「…テメェもな」


遠ざかる足取りに迷いなどあろうはずもない。


ただ全てが終わったときもう一度、生きて笑い合えるならそれでいいと知っているから。


見上げた先、重たい鈍色を背負った空が雷鳴を孕んで低く唸った。



曇天




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