※現パロ





「おい、いい加減泣き止め」

ソファーの上、華奢な身体をちんまりと丸めたルリからは、ぐすぐすと啜り泣く声が聞こえてくる。

貸してやったハンカチはどうやらもう使い物にならないらしい。

「ど、して、リヴァイさんはそんなに、平然としてるんですか…」

愚問だ。

「俺が恋愛映画を見て泣くようなタマだと思うのか」

「………ですよね」

微妙な沈黙の後、ルリはそっと画面へ視線を戻した。

けれど物静かなバラードと共に流れ始めたエンドロールを目にした瞬間、またみるみる涙が溜まっていく。

「うー…」

(……まだ泣くのか)

呆れたというよりはむしろ、まだ泣けるのかと、いっそ感心さえ覚える。

もうかれこれ一時間は泣きっぱなしだというのに。

「そんなに泣いて、よく干からびねぇもんだな」

「…だって…」

俯いた小さな頭、艶やかな黒髪をかき混ぜるように撫でれば、花の香りがふわりと広がった。

その一筋を掬い上げ、くるりと指先に絡めて弄ぶ。

すっかりと指先に馴染んだ滑らかな手触りが手離し難いものだと知ったのは、もう随分と昔のことだ。

「おい擦るな。腫れるぞ」

目を擦ろうとするルリを制して絡めたままの毛先をくいと引き寄せる。

覗き込んだ大きな瞳は真っ赤な色を浮かべていて、思わずあの小動物を連想させた。

「……兎みてぇだな」

「…うさぎ…」

何やら神妙な顔をして考え込むその表情は、いつもよりも幼げに見えて愛らしい。

堪らず緩んだ口許を誤魔化すため、わざと乱暴に彼女の頭をくしゃくしゃと掻き乱して手を離す。

ついでとばかりに飲み終えた二人分のマグカップを片付けようと腰を浮かせた瞬間、くい、と遠慮がちな力でシャツの裾を掴まれた。

「……ルリ?」

見下ろした先にあるのは、細い指先と薄紅色に染まったやわらかな頬と、今にも涙が零れ落ちそうなほど潤んだ眼差しと。

「…うさぎは寂しいと死んじゃうんですよ、リヴァイさん…」

だから傍にいてください、と囁く甘い声に。

盛大な音を立てて崩れ落ちる理性と両手に抱えたマグカップとを置き去りにして重ねた唇は、涙の味がして塩辛い筈なのに、けれどひどく甘かった。



Don't cry baby!

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