暖炉の炎がゆらゆらと楽しげに踊る暖かな談話室の片隅。

お気に入りのひじ掛け椅子に腰を下ろして頬杖を付きながら無造作に本を繰る姿が、驚くほど様になっている。

まじまじと見つめていたら、形の良い唇が意地悪な笑みを浮かべた。

「なんだ?俺を見ててもそのレポートは終わらねぇと思うが」

「…リヴァイはもう終わったの?」

「愚問だな」

「くっ…!」

あぁもうこれだから頭の良い人間は…!

悔しくなって書きかけだった魔法薬学のレポートに視線を落とせば、くしゃくしゃと頭を撫でられた。

「そうむくれるな…おい、ここ間違ってるぞ」

「えっ、どこ!」

「生ける屍の水薬に必要な材料だ。アスフォデルの球根の粉末が抜けてる」

「…ほんとだ。ありがとう、リヴァイ」

何だかんだ言っても、結局のところ彼は優しい。

そしてそんなところが好きで堪らないのだ。

お礼を込めてにっこりと笑顔を向けると、ふいに伸びてきたリヴァイの指先が頬から顎のラインをつぅ、と意味ありげになぞった。

「礼なら、言葉より態度で示して貰おうか」

「…はい?」

ぱちり、と瞬いた瞬間。

気付けば端整な顔が目の前にあった。

軽くネクタイを引かれて、そのまま唇が重なる。

「…っ…!」

まるで啄むように。

優しく触れて離れた唇は、すぐにまた角度を変えて深く重なった。

「…ん…っ、ふ…」

頭の芯がふわふわと心地好く揺れる。

いつものように彼の背に手を回そうとしたその時、暖炉で爆ぜる薪の音が一気に理性を呼び戻した。

「…………!」

慌ててリヴァイの胸を押して距離を取れば、いたく不機嫌そうに睨まれた。

(いやそんな顔をされても…!)

こっちは恥ずかしさで死にそうだと言うのに、何故この人はここまで堂々としていられるのだろうか。

「…おい、ルリ」

「やっ…ちょっ、待ってリヴァイ…!だって此処どこだか分かってる!?」

「談話室だろ」

「…知ってるなら止めてください…」

穴があったら入りたい。

せめて真っ赤になった頬を隠そうと俯けば、軽々と抱き上げられてリヴァイの膝の上へと移動させられた。

「!?」

「周りをよく見ろ。もう誰もいない」

「………あれ?」

恐る恐る視線を上げれば、確かに寮生は一人も残っていなかった。

時計を確認すると、とっくに深夜一時を回っている。

「…っ、あ…」

不敵に笑ったリヴァイの掌が、いつの間にかスカートの裾から入り込んでするりと太腿の辺りを這っていた。

ぞくぞくと背中に震えが走る。

「レポートは俺のを写させてやる。それで問題はねぇだろ?」

「…もう…!」

結局のところ耳元に落ちた優しい囁きに抗えるわけもなく、目を瞑ってもう一度唇の熱を受け入れたのだった。


wonder wonder

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