やわらかな陽射しの差し込む窓から賑やかな笑い声とボールの音が響く。

コートに目を向ければ、厳しい表情をした副部長にお叱りを受ける癖っ毛の頭が小さくうなだれていた。

「…また怒られてる」

しゅんとした様が何だか子犬のように可愛らしくて、笑ってしまう。

まさかその声が聞こえたわけではないだろうけれど、タイミングよくこちらを振り返った彼と目があった。

反射的に手を振れば、屈託ない笑顔を浮かべてブンブンと振り返してくれる。

幸せだなぁなんて思いながら頬杖をついたそのとき、ほんの少し強く吹いた風でクリーム色のカーテンが舞い上がった。

「瑠璃先輩!」

「う、え、あ、赤也?」

目を開けた瞬間そこにいたのは紛れもなく今の今までコートにいた赤也で、

「へへ、充電ー」

窓枠越しにぎゅうぎゅうと抱き締められる。

されるがまま肩に頬を寄せると、ずっと外にいたせいか、彼からはあたたかな春の匂いがした。

「んじゃ、もうひと頑張りしてくるっス」

最後に頬へ唇を寄せた赤也は照れたように顔を伏せて、残照の中へと駆け出していく。

その背中を見送りながら、与えられた熱の余韻に触れてそっと微笑んだ。



春風トロイメライ